2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01391
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 宏治 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (60294005)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 代償請求権 / 民法422条の2 / 履行不能 / 民法412条の2 / ドイツ新債務法 / 売買 / 代償財産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては,まず,比較法の対象としては,履行不能を要件とする明文の代償請求権規定を有する唯一の国として,ドイツを念頭に置いている。他方,代償請求権という権利について,権利論としての分析が先行するべきことはもちろんであるけれども,その権利を生じさせる行為としての行為論的分析も同時に進めている。今年度は,権利論と行為論のそれぞれについて比較的大きな研究実績を公開することに成功した。 第1に,前者の権利論的研究として,1点の業績を公表した。「ドイツ相続法における代償財産」千葉大学法学論集35巻1・2号1頁~63頁(2020.10.30)であり,これは,機能上代償請求権と類似する相続権の効力の考察である。すなわち,わが国の「代償財産」という言葉が,「代償請求権」という語と同様に,多様な意味で用いられていることを明らかにし,また,具体的事案における当事者の有利不利について従来は日独の差が大きかったこと,しかし,「代償財産」に関連して新設された民法906条の2の規定がその差を著しく小さくしたこと,さらには表見相続人の処分による「代償財産」の裁判例についての日独の違いも明らかにしたものである。 第2に,後者の行為論的研究として,2点の業績を公表した。うち1点は,『ドイツ売買論集』(信山社)566頁(目次・索引等を除いて515頁)(2021.2.28)であり,現代ドイツ民法学の売買論を考察する論文集である。そこで考察した諸論点は,すべて共同研究者のディーター・ライポルト教授によってドイツ新債務法の論点の中から選び出され,そして私が,わが国に紹介する意義があるか否か,という基準で選定したものである。なお,この業績は,公開が今年度であったけれども,研究自体は,過去20年間継続して実施されたものである。また,公開について,令和2年度の科研費補助金(研究成果公開費(学術図書))を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラスとして,『ドイツ売買論集』(信山社,2021.2.28)公開に際し,令和2年度の科研費補助金(研究成果公開費(学術図書))を受けることができたため。 マイナスとして,令和2年8月と令和2年3月にそれぞれ短期在外研究をドイツ・フライブルク大学において実施することを準備していたけれども,いずれもコロナウイルス禍のため延期せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年3月,8月,令和3年3月と都合3回計画してコロナウイルス禍によって延期した在外研究を,令和3年8月に実施したいと計画している。しかし,令和3年4月現在においてもコロナウイルス禍の先行きが見通せない状況であるため,令和3年8月の在外研究が実現するか否かは,なおも不透明である。 上記在外研究を実施できない場合には,さらに令和4年3月に延期する一方で,文献による調査とインターネットを用いたドイツ人教授との共同研究を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,計画していた2回の短期在外研究を延期したため。
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