2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01394
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡部 美由紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40271853)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民事執行法 / 債務者の財産情報の取得 / 弁護士会照会 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の最終年度である今年度は、昨年度に続いて、債務者の財産情報の取得に関する国内外の文献の収集・分析等を行い、とりわけ、債務者情報の取得に関する国内の制度について、弁護士会照会制度に焦点を当て、現状と課題を分析し、その解決策を探った。 弁護士会照会制度は、債務者に知られることなく、民事執行法上の制度よりも広く債務者の財産情報を収集できるという点でメリットがある。しかし、照会を行うか否かは、弁護士会の審査によって決まるところ、この審査によって照会先の報告義務の有無が一義的に確定するという建付けにはなっておらず、また、照会先の報告義務についても明文規定がないため、不安定さが残る。照会を受けた照会先は、弁護士会に対して、公法上の義務を負うことになるが、他方で、情報帰属主体のプライバシーや秘密等の利益を保護する立場にあることから、正当な理由がある場合には、報告義務を免除される。そして、判例によれば、漫然と照会に応じた場合には損害賠償責任を追及される可能性があるため、報告義務の存否を判断する負担は極めて大きい。報告義務の存否に争いがある場合、これを確定する手段としては、従来訴訟が用いられてきたが、近年、最判平成28年10月18日と最判平成30年12月21日により、少なくとも弁護士会には、訴訟により報告義務の履行を確保する途はなくなった。そのため、報告義務の履行確保手段の確立が課題になっている。そこで、広義の仲裁の利用により、報告義務を確定する方策の有用性を検討した。本年度の研究成果として、弁護士会照会に対する報告義務と仲裁に関する論文1本(JCAジャーナル69巻6号〔2022〕掲載予定)と、研究期間全体の研究成果として、預金債権の差押えを素材に、わが国における債務者情報取得制度の現状と課題に関する論文を1本執筆した(本報告書執筆時点では未公刊)。
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