2019 Fiscal Year Research-status Report
Construction of the model for corporation between judicail and adminisrative institutes in resolving international family disputes
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19K01395
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村上 正子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10312787)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 養育費 / 子の利益 / 国際裁判管轄 / 外国判決の承認・執行 / 養育費確保 / 民事執行法改正 / ブリュッセル規則Ⅱa / 中央当局 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国際家事紛争の適切かつ迅速な解決のための、司法と行政の連携のあり方を検討する前提として、司法の枠組みの中でどこまで解決が可能かについて、国内の現状を確認した。 具体的には、平成30年4月から施行された、国際家事紛争の国際裁判管轄のら中でも、子の監護権指定や養育費請求にかかる紛争の国際裁判管轄をめぐる問題を検討した。新たな規定の下では、相手方の住所地に加えて、子の住所地や権利者の住所地にも管轄が認められたが、実際にはその判決を相手方の住所地国で執行して養育費を回収する困難を考えると、提訴の困難を考慮しても相手方の住所地で提訴をする方が現実的であるという見解が強いことがわかった。また、今年4月から施行された、改正民事執行法では、家事関係債務(主に養育費)の履行確保・実効的実現が図られ、第三者からの情報取得手続が整備されているものの、扶養権利者が所在のわからない義務者にかかる情報を得るのは困難であり、実効性が本当にあるのか疑問があることがわかった。 今年度はさらに、EUにおける国際家事紛争に関するブリュッセルⅡa規則の改正の経緯の中で、各国の司法機関や行政機関の連携がどのように採られているかをみた。EUという一つの共同体の中で、長い時間をかけて構成国相互間の司法制度や行政機関に対する信頼と強調が構築されてきたという特殊性はあるものの、規則の改正に至る議論は、子の最善の利益の保護を考慮しつつ、子の返還(引渡し)や親責任にかかる判決の承認執行を迅速かつ効率的に実現することを追求し、そのためには何が必要なのかを熟慮したうえで提案されているものであり、日本における事案解決の改善と、司法と行政の連携のあり方に向けて検討していく際の一つの指針となりうることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していなかった、改正執行法の検討を行ったため、当初予定していた、ハーグ子奪取条約以外の国際条約における中央当局制度の検討・分析ができなかった。 また、司法と行政の連携や役割分担について、国内の現状を把握するため、地方自治体に聞き取り調査を予定していたが、2月以降のコロナ感染拡大により実現できなかった。 以上のことから、本研究課題の進捗状況について、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、コロナ感染拡大による海外渡航制限の状況なども見つつ、アジア諸国で国際化が進んでいるシンガポールや香港において、司法と行政の連携と役割分担がどのようになされているか、その現状を調査する予定である。 もし現状が改善されず、海外調査ができない場合には、昨年度出来なかった国内の実態調査を行うとともに、関連する国際条約における中央当局制度の検討・分析を、文献資料に基づいて整理する予定である。 さらに、最近の民事執行法改正で整備された養育費の履行確保のための制度が、どの程度実効性があったかについても、司法統計等に基づき調査・分析する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大により、予定していた国内調査ができなかったため。 来年度以降、コロナ感染拡大による移動制限緩和状況を見ながら、適宜国内及び海外調査を再開する予定。
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