2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01397
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神野 礼斉 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (80330950)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成年後見 / 後見監督 / 強制治療 / 遺言能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
「成年後見制度の規律と支援」『現代家族法講座 第4巻 後見・扶養』(日本評論社)では、成年後見人による横領などの不正行為が後を絶たない中、成年後見制度の安定的な運用のためにとりわけ重要となると思われる諸点を取り上げ、若干の検討を試みた。具体的には、成年後見人等の選任手続(複数後見、法人後見、権限分掌など)、後見監督(家庭裁判所による監督、後見監督人の選任、後見制度支援信託、後見支援預金、専門職団体による監督)についてである。差し当たりはこのような現行の規律を前提として、地域連携ネットワークなどの支援体制によって適正な運用を実現することを目指すことになろうが、場合によっては、家庭裁判所の許可という形で成年後見人の代理権を制限するなど、さらに踏み込んだ規制も必要であることを指摘した。 「認知症患者をめぐる医事法上の問題」『精神科医療と医事法』(信山社)では、ドイツ成年後見法(世話法)を参考に、わが国における違法な強制入院や隔離、身体拘束に対する法的対応の必要性を説いた。意思能力を欠く認知症患者のために身体に対する強制を伴う措置が必要となった場合、わが国では精神保健福祉法などにいくつかの規定はあるものの、いずれの措置についても裁判所の関与は予定されていない。ドイツなど欧米諸国では強制入院など本人の自由を剥奪する措置については裁判所の関与が前提とされている。このような自由剥奪は、本人の権利を著しく侵害する可能性があり、十分な権利保護が保障されなければならないからである。 「遺言能力と後見開始の審判──東京地裁平成29年12月21日判決」実践成年後見77号では、遺言能力をめぐる本件のようなトラブルを未然に防止するためには、できるだけ早期に後見開始の審判を受けることが有用であることを説いた。後見開始の審判を受ければ、その後に遺言を作成するには医師2人以上の立会いが必要となるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市民後見人の養成を含む成年後見人養成システムの検討が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、市民後見人養成、任意後見制度の積極的活用などについても検討を行い、さらに本研究を推進する。
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Causes of Carryover |
購入予定の書籍の発行が遅れたため。次年度に使用予定。
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