2020 Fiscal Year Research-status Report
消費者の財産的被害の集団的回復手続の拡充:行政との連携及びADR活用の可能性
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19K01400
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
工藤 敏隆 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 准教授 (50595478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 集合的権利保護 / 裁判外紛争解決手続 / 消費者裁判手続特例法 / 金融ADR |
Outline of Annual Research Achievements |
主にイベロアメリカ地域における、行政機関が消費者の集団的被害回復のための訴訟提起・追行を行う制度や、裁判外紛争解決手続(ADR)を活用する制度の実情について、前年度からの研究を継続した。 2020年度は特に、行政機関である連邦消費者保護局(PROFECO)が消費者集団訴訟の提起・追行の主たる役割を担う、メキシコの制度や実際の事件処理状況について研究を行った。同国の制度や運用の特徴としては、クラス・アクションでありつつも、個別被害者からの訴訟追行の授権もする点や、集団訴訟の適法性を認証した後に和解の試みが義務付けられ、実際にも早期に和解が成立する事案が多いこと等が判明した。 また、スペインの消費者仲裁システムについては、仲裁機関は主に地方自治体が設置・運営するが、消費者仲裁統括委員会や、消費者仲裁システム総評議会のように、消費者仲裁に関する手続法の解釈や仲裁人の質の確保について、全国的な統一性ないし均質性を確保する仕組みが存在することや、事業者による消費者仲裁付託の一方的な公開申出に対し、消費者が仲裁を申し立てることで仲裁合意の成立が擬制されること、集団的仲裁に関する特別な手続など、特徴的な制度があることが判明した。 加えて、2020年7月に開催された仲裁ADR法学会大会において、個別報告「金融ADR機関の業態横断的統合への可能性:オーストラリアにおける統合経過も踏まえて」を務め、オーストラリアにおける金融の業界団体による複数業態の自主的なADRが、自主的統合や法改正を経て統一の機関となり、利用者にとっての分かり易さや、効率的な運営を実現するに至った経過を紹介・検証し、参加者と質疑応答を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メキシコの消費者集団訴訟における連邦消費者保護局の役割については、論文脱稿に至っており、2021年度中の公表が決まっている。また、スペインの消費者仲裁システムにおける特徴的な制度の紹介等を行う論文についても、2021年度上半期には脱稿を予定している。 これらにより、行政との連携とADRの活用に関して、それぞれ注目に値する外国の制度からのわが国への示唆を明らかにできると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスのパンデミック収束の見通しが不確実であるため、2021年度も文献資料による調査が中心になるが、適宜オンライン・インタビューなどの方法も交えて調査を継続する。調査結果の取りまとめが概ね完了したメキシコ、スペインに加えて、さらにあと1、2カ国の外国法制を調査し、結果を論文にまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのパンデミックが未だ収束に至らず、2020年度も海外での調査を実施できなかったため、予定外の未使用額が生じた。今年度中に、ワクチンの普及等により海外調査が可能になった場合は、海外での調査費用(旅費や通訳謝金等)に使用するが、それが叶わなかった場合は、文献調査、文献翻訳、オンライン通訳等の費用に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)