2021 Fiscal Year Annual Research Report
消費者の財産的被害の集団的回復手続の拡充:行政との連携及びADR活用の可能性
Project/Area Number |
19K01400
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
工藤 敏隆 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 准教授 (50595478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 集合的権利保護 / 裁判外紛争解決手続 / 消費者法 |
Outline of Annual Research Achievements |
スペインにおける消費者ADRについて、文献資料の分析、および現地実務家に対する書面インタビューによる調査を行い、以下の特徴が判明した。 スペインの消費者ADR機関としては、地方政府が設置する消費者情報事務所がある。同事務所は、消費者に対する情報提供や相談に加え、消費者と事業者間の紛争のメディエーションも担当業務に含んでいる。これとは別に主に地方政府が設置するADR機関として消費者仲裁委員会があり、同委員会と関係機関によって構成される消費者仲裁手続の仕組みは、消費者仲裁システムと呼ばれる。 消費者仲裁システムについては国の政令である、消費者仲裁システムに関する政令(RDAC)が規律するが、仲裁機関である消費者仲裁委員会は、全国消費者仲裁委員会を除き、地方政府である自治州や市が固有の権限で設置する。そのため、RDACに規定がなく、設置主体の立法や運用に委ねられている部分では、地方毎に手続に差異が生じる。他方で、消費者仲裁システムを所管する中央官庁である消費者省は、消費者仲裁システムの全国的統一のための機関を設置する。1つは消費者仲裁統括委員会であり、具体的事件の手続運営や判断といったミクロのレベルでの統一を担っている。もう1つは消費者仲裁システム総評議会であり、一般的なガイドラインや制度設計といったマクロのレベルでの統一を担っている。 このように、スペインの消費者仲裁システムは中央と地方、あるいは消費者と事業者の均衡に配慮した合議制の機関を通じて緩やかな統一を企図していることに特色がある。この点は、わが国における行政型消費者ADRとして、地方自治体における相談や紛争解決手続の広域連携、および地方自治体と国民生活センターや消費者庁との連携を行うに際し、業務や権限の分掌の1つのモデルとして、参考になり得る。
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Research Products
(2 results)