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2019 Fiscal Year Research-status Report

いわゆる可分債権の準共有法理

Research Project

Project/Area Number 19K01401
Research InstitutionSophia University

Principal Investigator

伊藤 栄寿  上智大学, 法学部, 教授 (30454317)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords可分債権 / 準共有
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、可分債権が非分割とされる場面の法理を明確化することを試みるものである。具体的には、次の3つの課題を設定している。(1)給付が可分である債権にもかかわらず、多数の債権者に分割帰属しないとされている事案の収集・整理を行うこと、(2)(1)で抽出された裁判例において、非分割とされた可分債権にいかなる法理が適用されているのかを整理・検討すること、(3)(2)の検討をふまえて、可分債権が非分割とされる法理を提示することである。初年度である2019年度は、(1)の課題を中心に取り組んだ。
可分債権の共同相続に関するリーディングケースである最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁は、不法行為に基づく損害賠償請求権が可分債権であることから、共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとした。その後、この判決を引用する最高裁判決が続いたが、最大決平成28年12月19日民集70巻8号2121頁は、可分債権と目されてきた普通預金債権が、共同相続人に当然分割帰属しない旨判示した。
近時の判例の捉え方は2つありうる。第1に、「可分債権」という用語がほとんど用いられていないことから、「可分債権=共同相続人に分割帰属」というテーゼが放棄されたとの考え方である。第2に、上記テーゼは放棄されておらず、「預金債権=可分債権」との従来の一般的な考え方が変更されたとの考え方である。
区分所有に関する最判平成27年9月18日判時2278号63頁は、共用部分から生じた賃料債権が、区分所有者に分割帰属しないとしており、預金債権の場合と同様、2つの考え方が成り立ちうることがわかった。
また、上記作業に加えて、共有法に多大な影響を与えたドイツ法についての資料収集も行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2019年度の目標は、可分債権の共同相続が問題となった裁判例を収集・整理し、共有に関わる可分債権を網羅的に検討し、各裁判例における法理論を明確化することにあった。
当初の予定通り、最高裁での判断が行われている預貯金債権や、区分所有に関わる債権についての収集・分析を行うことができた。下級審裁判例についても、おおよそのものを収集・分析することができた。ドイツ法についても、一定の文献を収集することができた。
また、2017年に改正された民法(債権法)について、関連する規定や制度が存在するところ、それらについても一定の検討を行い、研究成果を発表することができた。現在、改正が議論されている物権法についても同様である。
当初の目的としていた課題をおおよそ達成することができたため、研究は「おおむね順調に進展している」といえる。

Strategy for Future Research Activity

本研究は、可分債権が非分割とされる場面の法理を明確化することを試みるものである。2019年度は、研究の第1段階として、可分債権の共同相続が問題となった裁判例を収集・整理し、共有に関わる可分債権を網羅的に検討し、各裁判例における法理論を明確化した。
2020年度は、研究の第2段階として、非分割とされた可分債権にいかなる法理が適用されているのかを整理・検討する。具体的には、準共有法理が考えられるところ、この内容を明らかにする。従来、準共有法理については、適用場面が明確とは言いがたいこともあり、じゅうぶんな議論がなされてきたとは言いがたい。とりわけ、債権については、多数当事者の債権関係の規定が存在することから、債権についての準共有の規定はほとんど検討されてこなかった。そこで、ドイツ法なども参照しながら検討を進めることとする。
上記検討にあたっては、民法研究者から構成される研究会で報告・議論をし、可分債権の準共有法理についての中間的な報告を行う。また、ドイツ法について、最新学説・裁判例の状況を把握するため、可能であれば現地での資料収集を行う。

Causes of Carryover

新型コロナウィルスの影響により、予定していた研究会への参加が不可能となったため、次年度使用額が生じた。2020年度における研究会への参加旅費として使用予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2020 2019

All Journal Article (3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 詐害行為取消権の効果2020

    • Author(s)
      伊藤栄寿
    • Journal Title

      法学教室

      Volume: 474 Pages: 73-80

  • [Journal Article] 共有法改正の根拠と限界――憲法上の財産権保障の観点から(上)2020

    • Author(s)
      伊藤栄寿
    • Journal Title

      法律時報

      Volume: 1149 Pages: 87-93

  • [Journal Article] 詐害行為取消権の要件2019

    • Author(s)
      伊藤栄寿
    • Journal Title

      法学教室

      Volume: 470 Pages: 81-88

  • [Book] 民事判例192019

    • Author(s)
      現代民事判例研究会
    • Total Pages
      132
    • Publisher
      日本評論社
    • ISBN
      978-4-535-00247-0

URL: 

Published: 2021-01-27  

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