2021 Fiscal Year Research-status Report
キャッシュレス支払における無権限決済のリスク分担ルールの検討:電子マネーを中心に
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19K01402
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
深川 裕佳 南山大学, 法務研究科, 教授 (10424780)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャッシュレス支払手段 / 支払手段の不正使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,電子マネーやクレジットカードのようなキャッシュレス支払手段が,権限を有しない者によって不正に使用された場合に生じるリスクを,消費者と事業者の間において合理的に分配するルールを検討することを目的とするものである。 本年度は,上記目的に照らして,(1)昨年度に実施することを予定していた我が国における実態を調査した。日本資金決済協会は,前払式支払手段等について資金決済法に規定された認定資金決済事業者協会であり,前払式支払手段に関する統計資料やガイドライン等を公表している。そこで,これらの資料を手掛かりとして,前払式支払手段発行業者の約款を比較検討する作業を行った。また,(2)昨年度に実施することを予定していた欧州・フランスの議論状況を探るべく,文献資料を収集し,分析に着手した。 上記(1)については,現在,研究成果を論文として公表するために準備を行っているところである。また,その準備段階において,本研究の目的である多様な決済手段にかかわる消費者問題として,近年,ファクタリングに関する問題が生じていることが明らかとなったため,近年の裁判例を分析して判例研究を公表した。 上記(2)については,我が国では,決済手段ごとに本研究の問題に関する解決策が異なるものの,消費者(利用者)保護の観点からは統一的な解決策が望ましいものと考えられ,このような統一的解決策を検討するのに有益な示唆が得られるとの確証が得られたため,さらに,今後,分析を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」において述べた通り,本年度は,昨年度に計画した研究をおおむね行うことができた。そのため,おおむね順調に進展していると考えられる。もっとも,新型コロナウイルス感染症の拡大によって,比較法研究の資料が十分に集められていないので,来年度は,この点を中心に研究を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)我が国の状況については,本年度に行った分析の成果を論文として公表するべく,取りまとめを行う予定である。また,(2)上記「現在までの進捗状況」に述べた通り,比較法研究の資料として,欧州やフランスでの議論の現状を調べるのに十分な資料が集まっていないので,次年度は,この点を中心的に研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
比較法研究の対象としている欧州・フランスの文献をそろえるために現地に赴いて資料収集・調査を行うことを予定していたものの,新型コロナウイルスの感染拡大によってこれを実施することができなかったため,次年度において実施することを予定しており,その際に使用する予定である。
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