2023 Fiscal Year Annual Research Report
キャッシュレス支払における無権限決済のリスク分担ルールの検討:電子マネーを中心に
Project/Area Number |
19K01402
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
深川 裕佳 南山大学, 法務研究科, 教授 (10424780)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 決済手段の不正利用 / キャッシュレス決済 / 電子マネー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,電子マネーやクレジットカードのようなキャッシュレス支払手段が,権限を有しない者によって不正に使用された場合に生じるリスクを,消費者と事業者の間において合理的に分配するルールを検討することを目的とするものである。本年度は,この目的に照らして,消費者が消費者保護の観点から,支払手段発行業者に対して,売買等の契約上の抗弁を対抗することの理論的な意義を検討する手掛かりを探るため,民法において規定される「対抗」の意義を検討し,その成果を論文としてまとめて公表した(後掲論文:深川裕佳「法定相殺における「対抗することができる」および「対抗することができない」の意味――フランスにおける近年の学説を参考にして」南山法学46巻3-4号(2023年)15-34頁)。 本研究期間全体を通じて,わが国では多数の電子マネー発行者が存在しており,それだけでなく,1つの発行者が電子マネーの発行と同時に,クレジットカード(包括信用購入あっせん)や資金移動(為替取引)などの複数のサービスを提供していたり,1つの電子マネーについて現金・銀行口座を利用した前払いによるチャージだけでなく,クレジットカードを利用した後払いによるチャージができるものもあったりするという複雑な状況にあることから,支払手段の別なく横断的に規制する立法を導入する必要性があることが明らかとなった。その際,支払手段の無権限利用のリスクは,保有者からの無権限利用通知を要件として,原則として電子マネー発行者が負うこととすることが考えられ,そのうえで,支払手段の使用に認証に暗証番号等を利用するであるとか,少額電子マネーであるとかいったものについては,その特徴に見合ったリスク分担のルールが必要になると考えられた。
|