2020 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Socio-Legal Studies on the Control of Consumer Vulnerability
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19K01403
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消費者脆弱性 / 合理的配慮 / 非良心的取引 / 不公正な契約条項 / 不当な影響力の行使 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、予定されていた海外調査(於 イギリス)及び学会参加(於 スペイン・マドリッド、イギリス・エクセター、オーストリア・ウィーン)のいずれも実現することができなかった。だが、オンラインによる学会参加に加えて、新たに開かれた多くの国際セミナーへの参加に努め、海外の最新状況を入手するとともに、これまでに培ってきた研究者ネットワークを維持することができた、 また、今年度は、本研究課題の主要なテーマである「消費者脆弱性」の制御・解消に関する論稿を、様々な媒体において、数多く発表することができた(後掲、研究成果一覧を参照)。 さらに、2年間かけて下準備を行ってきた、イギリス契約法の基本思想に関する書物(ニコラス・マックブライド原著)の翻訳を完了させ、刊行することができた。 本年度の研究を通して、こうした特殊な状況であるからこその気づきも多かった。たとえば、新型コロナウィルス感染症の拡大を抑止するために、ヨーロッパを中心に諸外国において行われた「都市封鎖(ロックダウン)」がもたらした実情をみることにより、従来の契約法上の権利を適法に行使することが、実は、相手方の脆弱性を引き起こしたり、増加させてしまうことにつながるという深刻なディレンマに気づくことになった。単に、「脆弱性へのつけこみ」とは法的に評価すべきでない事態が多く生じたのが、2020年の世界的状況であったといえよう。 消費者のみが脆弱な状況に置かれているのではなく、事業者もともに脆弱な状況に置かれているとき、契約法上の権利を主張するのみでは真の解決に至らず、場合によっては、新たな脆弱性を生み出しかねないという深刻な問題にわれわれが直面している、ということを認識するに至った。事業者=相対的強者、消費者=相対的弱者という単純な二項対立論に注意しながら、消費者脆弱性の問題に取り組む必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の蔓延・拡大により、国外渡航がすべて不可能となり、出席予定だった学会参加や、予定されていた海外調査がすべて取り止めとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、新型コロナウィルスの感染拡大による海外渡航制限は続くと思われる。そのため、オンラインによる国際学会参加や国際セミナーへの参加を中心とし、海外調査については、来年度以降に延期したいと考えている。 さらに、今後は、新たな「ノーマル」となった会議オンライン機能を駆使し、海外に在住する様々な分野の研究者や実務家、関係諸機関とのウェビナーを積極的に開催していきたいと考えている。 また、引き続き、論文執筆に努めるとともに、講演依頼についても、対面・オンラインの両方法を適切に検討した上で、積極的に引き受ける方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の世界的拡大が続き、収束が見えない中、渡航制限のために予定していいた海外調査、及び、海外研究者の招聘がすべて中止となったため。 引き続き、海外出張ができない状況が続くと思われるため、2020年度及び2021年度の海外調査用予算については、2022年度に繰り越す計画である。
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Research Products
(6 results)