2022 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Socio-Legal Studies on the Control of Consumer Vulnerability
Project/Area Number |
19K01403
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 消費者脆弱性 / 国際規格ISO / ISO22458 / 包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「消費者脆弱性」という概念に着目し、立法政策によってその制御を試みることを目的としてきた。最終年度を迎えた2022年度は、特に、こうした意識・認識の日本社会への浸透・共有に力を入れた。具体的には、東京大学高齢社会総合研究機構ジェロントロジー・アカデミー、慶応義塾大学経済研究所ファイナンシャル・ ジェロントロジー研究センター、日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会(包括消費者法部会)、NPO法人消費者ネットジャパン(じゃこネット)研究会といった諸機関・諸組織と協同し、招聘講演を行った。 また、本研究は「消費者脆弱性」を制御、ひいては解消するような、立法や法改正を目指すものではあるものの、研究を進める中で、そうした「ハードロー」にすべてを任すのではなく、むしろ「ソフトロー」から始め、徐々に社会変革を図りながら、その上でどうしても法規制などが必要な部分にのみ法が関与することが望ましいということを認識するに至った。そこで、「ソフトロー」として、規格・標準化の重要性に着目し、2022年4月に発行され、研究代表者も国内員会の委員として策定に携った国際規格(ISO)22458「消費者脆弱性:包摂的なサービスの設計と提供のための要求事項とガイドライン」に着目し、日本社会への普及に努めた。具体的には、日本産業標準調査会(JISC)基本政策部会の委員として、サービスにおける規格・標準化に関連して、同ISO規格の日本規格(JS)化を強く提唱している。 同ISO規格については、英語で発行されており、日本国内に広く普及するためには日本語によることが有益であるが、全部を翻訳するためにはコピーライト等の法的制約があることから、 全体的な解説と要約をめざした論文を公表した。今後はさらに、同ISO規格の日本規格化を目指すためにも、公式な全翻訳作業に向けて、申請手続き等、諸々の準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を主テーマとして招聘講演を4回行い、関連論文を3本、公表することができた。また、コロナウィルスによる渡航困難などの制約を受けながらも、ポルトガル・ポルト大学法経済研究所などと国際交流をすすめ、一定の成果をおさめることができた。さらに、台湾・東海大学法学部の学生たちに、オンラインを用いた集中講義を行うことができた。ただし、予定していた海外渡航がかなわなかったことから、国際学会参加については実現できなかった。今回、延長申請が認められたことから、2023年度に期したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は「消費者脆弱性」を制御、ひいては解消するような、立法や法改正を目指すものではあるものの、4年間にわたって研究を進める中で、そうした「ハードロー」にすべてを任すのではなく、むしろ「ソフトロー」を設けることから始め、徐々に社会変革を図りながら、その上でどうしても法規制などが必要な部分にのみ法が関与することが望ましいとの認識を得るに至った。そこで、「ソフトロー」として、規格・標準化の重要性に着目することとした。今後は、ソフトローとしての規格・標準化に力を入れて、研究をさらに深めていきたいと考えている。 具体的には、2022年4月に発行され、研究代表者も国内員会の委員として策定に携った国際規格(ISO)22458「消費者脆弱性:包摂的なサービスの設計と提供のための要求事項とガイドライン」に着目し、日本社会への普及に努めたい。これに関連して、2022年度より日本産業標準調査会(JISC)基本政策部会の委員として、サービス分野における規格・標準化に関する審議に参加している。今後は、さらに、同ISO規格の日本規格(JS)化をめざして関係諸機関との連携を強めていきたい。 そこで、今後の研究の推進方策としては、第一に、より一般的な見地から、消費者サービスについて勧誘行為の適正化やサービスの質の安全・安心の確保、消費者の期待への適合化などを図りたい。それと同時に、第二の軸として、「消費者脆弱性」に焦点を当てて「包摂的な」サービスの提供を確保すべく、関係諸機関と連携を深めながら、具体的な形、すなわち、日本規格(JS)化や、その前提としての公式翻訳の発行など、に力を入れていきたいと考えている。さらに、金融分野における脆弱性や、EU法分野で関心の高まっているデジタル商品における脆弱性について、事業者に情報開示以上のより積極的な義務を課すものとして検討してみたいと考えている。
|
Research Products
(9 results)