2019 Fiscal Year Research-status Report
株式会社に一定の行動を促す非財務情報の開示と法規制の研究
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19K01406
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス・コード / 非財務情報の開示 / 遵守または説明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、イギリスの2018年版コーポレートガバナンス・コードについて、関連する文献・資料を収集するとともに、丁寧な読み込み作業を実施すること、そして年度末までにイギリスでの聴取調査と資料収集を実施することを計画し、他方で、イギリス以外で同様の規制手法をとる国や地域(EU加盟国などを想定)について、当該国の開示規制制度について、規制の概要などの一定の知見を得ることを計画していた。 第1のイギリスについては、雑誌(日本監査役協会の「月刊監査役」8月号)に2018年版コーポレートガバナンス・コードに関する原稿を公表する機会を得たため、この原稿執筆のための基礎的作業として、2018年版コードについてかなり詳細に検討することができた。他方、イギリスでの調査については、ちょうど3月初旬に、所属大学とバーミンガム大学の共催イベントが予定され、その関連セッションでバーミンガム大学の会社法研究者や実務家との意見交換ができることから、これに合わせて渡英計画を進めた。すべての準備が整い渡英という時点で、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、バーミンガム大学でのセッション等全てのイベントが中止となり、ロンドン大学等での資料収集のみを行う結果となった。 第2のその他の国や地域については、英法系の国であるオーストラリアとカナダについて、かなり研究・調査を進めており、論考にまとめる作業に着手できている。また、アイルランドについて、会社法にタックス・コンプライアンスに関する開示規制が導入されていることを確認し、その経緯について調査を進めている。当初想定していた主要なEU加盟国のいずれかの調査・研究は次年度に持ち越すことになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスの2018年版コーポレートガバナンス・コードについて詳細な検討を行うことができ、イギリスの現地調査では大学研究者や会社法実務家との意見交換の機会を得られなかったものの、資料収集等を行うことができた。開示の実態はネットで公表される上場会社の年次報告書からも把握することができる。イギリス以外の国や地域については、オーストラリアとカナダについて、かなり調査・研究を進めることができており、一応論考にまとめる段階まで進んでいる。これは、当初の計画を超える進展ということができる。アイルランドについては、当初は予定していなかったものの、興味深い会社法規定を見つけることができて、研究をまとめる段階である。EUの主要な加盟国についての調査・検討は次年度に持ち越したものの、研究期間初年度の状況として考えると、本研究の進捗状況は、おおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度における研究の全体像としては、第1に、コーポレートガバナンス・コードの遵守または説明を含めたイギリス会社法上の上場会社に関する開示規制について、本年度段階までの研究内容を論文にまとめる作業を進めるとともに、オーストラリアとカナダについても、論考にまとめる作業を進める予定である。その際には、当初想定していなかったことではあるが、新型コロナウイルス感染拡大との関係で、withコロナ、あるいは、afterコロナに関係する開示内容がどのように織り込まれていくのか、法制度あるいは開示実務の変化に留意する必要がある。アイルランド以外のEU加盟国についても、今年度中に、研究対象に適した国や地域を絞り込んで、調査・検討に着手できるよう、目を配りながら研究を進める予定である。
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