2020 Fiscal Year Research-status Report
株式会社に一定の行動を促す非財務情報の開示と法規制の研究
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19K01406
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス・コード / 非財務情報の開示 / 遵守または説明 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、イギリスについて、前年度に行った資料収集によって入手できた資料等を使い、非財務情報の開示について現状を確認する作業(当初は2020年度における海外調査を予定)を進め、論文としてまとめることと、英法系の国であり、またアメリカ法の影響の強いカナダやオーストラリアについて、昨年度進めた研究をさらに深化させて、文章化することを計画していた。 まず、第1のイギリスについては、会社法の規制による記述情報の開示について、開示情報の信頼性確保の手法も含めて論考にまとめ、その一部を雑誌(国際商事法務48巻9号)に公表することができた。イギリスの場合、企業の情報開示に関する規制が一元的に会社法で定められており、そのため、上場会社等ばかりでなく大規模私会社をも対象とする開示規制(例えば、温室効果ガスの排出に関する情報開示)を、取締役報告書による開示で一元的に規制することができる、といった特徴を確認した。第2のカナダとオーストラリアについても、それぞれに文章化する作業を進め、紹介論文に止まるが、その一部を雑誌(国際商事法務48巻11号)に公表した。カナダについては、特に、気候変動と取締役会のダイバーシティに関する情報開示を、若干詳しく取り上げている。 なお、当初想定していたEU加盟国の調査研究は、思うようには進展せず、カナダ・オーストラリアの研究で代替する状況にある。アイルランドのタックス・コンプライアンスに関する開示規制は、引き続き研究を続けている。また、研究期間の中盤以降に2回目の海外調査を実施する予定であったが、2020年度には実現できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスについて、2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂や大規模私会社向けガバナンス・コードの創設も含めて、得られた知識を整理し、記述情報の開示規制について、雑誌論文にまとめるて公表することができた。また、オーストラリアとカナダについても、論考にまとめて一部公表することができている。他方、EUの主要国については調査研究が進展せず、研究対象から外すことになるかもしれない。なお、アイルランドについては研究を継続できている。海外調査については、2020年度にはコロナ禍の影響を受けて実施できていないが、ネットでの情報収集により、不十分ながら情報の蓄積を進めることができており、特にイギリスについては、2021年3月公表の事業・エネルギー・産業戦略省(BEIS省)の意見聴取文書(Restoring trust in audit and corporate governance, March 2021)を入手している。ここには、今後の記述情報の開示規制の観点からも、注目される提案が含まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、これまで積み上げてきた公表論文、および、研究・調査を整理して文章化した内容等を、企業に一定の行動を促す非財務情報の開示について望ましい規制の在り方等を明らかにするという研究目標に沿って、まとめていく作業を推進する予定である。できれば研究会等での研究報告も実施したいと考えている。なお、新しい研究材料として、イギリス政府(BEIS)が本年3月に公表した意見聴取文書が、意見聴取の結果を経てどのような制度に結実するかも、併せてフォローしていく予定である。 次に、前年度には実現しなかった海外調査については、できれば実施したいと考えているが、現在もコロナ禍の収束が見通せない状況であること、加えて、書籍等の収集費用も嵩んできていることから、費用的にも現地調査が難しくなるおそれがある。そのため、状況に応じてネット等を活用した資料収集等によって、できる限り補っていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度に実施を予定していた海外調査(ロンドンを予定)がコロナ禍の影響を受けて実施できなくなったため、次年度使用額が生じている。2021年度には海外調査を是非実現したいと考えているが、現状では依然としてコロナ禍の収束が見通せない状況にある。他方で、洋書を含めた資料収集費用も高騰しているため、資料収集等にあてる費用が当初の予定を超えて増加しており、海外調査にあてることを想定していた費用をこちらに充当することが必要になるかとも考えている。
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