2019 Fiscal Year Research-status Report
Civil Liability for Disclosure Violations in Financial Market
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19K01407
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和田 宗久 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60366987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不実開示 / 金融商品取引法 / 会社法 / 民事責任 / 課徴金 / 証券市場 / クラスアクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、証券市場において発行会社が不実開示を行った場合に、発行会社、その役員等または監査法人などの主体につて、どのような法的責任責任を課し、とくに民事責任を通じて投資家等の経済的損失を填補することが適切であるか、ということを研究することを目的とするものである。本研究では、とくに発行会社の不実開示に関する民事責任制度の目的につき、単に抽象的な「投資家保護」という視点だけではなく、不実開示という投資家等に不合理な 形で経済的損失を生じさせる事態において、当該経済的損失に対して、可能な限り適切な形で填補が行われることを保証することにより、市場の信頼性および高潔性 (Integrity)の確保・向上を図り、投資家にとってより信頼性の高い市場の構築に資するようにするとともに、もって上場会社にとっても資金調達がしやすい市場環境の整備に資するようにするか、といった観点に立って研究を行うことに特徴がある。 2019年度(令和元年度)は、まず最初に、本件研究の問題意識をより明確にすてるべく、「不法行為制度の意義・目的」に関するこれまでの議論に関する研究を行い、不法行為が問題とされる分野によっては「損害の填補」から「抑止」という機能を重視する流れがあることを明らかにした。また、本研究が対象とする「不実開示」に関する問題について、不実開示ということが認識される前提となる「ディスクロージャー制度」に関して、同年度に行われた「記述情報(非財務情報)開示」の充実に関する企業内容開示府令の改正について分析・検討を行った論稿を執筆した。 その一方で、本研究における研究手法面でのチャレンジである「統計ないしモデルを用いた分析等」を行うことについて、本年度では、それを行うための資料収集および事前準備等を行った。これらを踏まえ、2020年の夏以降、本研究における具体的な研究を実際に行っていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、2019年度(令和元年度)は、本研究における研究手法面でのチャレンジである「統計ないしモデルを用いた分析等」を行うべく、そのための資料収集および事前準備等を行ったものの、それらの状況は当初の想定と比較して遅れ気味である。その大きな要因としては、いわゆるCOVID-19の流行より、研究代表者が大学で行う教育面・研究面での業務に関して、特別な対応をとる必要があったことによる部分が大きい。ただ、そうした対応については、2020年度(令和2年度)の夏頃には一段落するものと思われるので、それ以降、「統計ないしモデルを用いた分析等」を具体的に行えるよう、準備等を加速させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、とくに、不実開示がなされた際の関係者の民事責任制度のあり方について、過去の具体的な不実開示事例の分析、現在の市場の状況、それに関わっている責任主体となり得る者らの状況等を踏まえ、多角的にデータ分析を行ったり、また、ある程度平均的な責任主体となり得る者らが想定されることを前提に、ある種のモデルを構築し、そのモデルを詳細に (できれば、コンピューターを用いて)分析することにより、最適な填補や不実開示の抑止に繋がる制度のあり方を導き出すことを目指しているが、2020年度は、そうした手法で制度分析を行っている海外の事例・業績の分析を行うとともに、上述したように、現時点では遅れ気味であるコンピューターを用いた分析を行うためのプログラミング環境の整備、プログラミング言語の学習を早急に進め、なるべく早い段階で具体的な分析・研究に入りたいと考えてる。
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Causes of Carryover |
2019年度(令和元年度)は、COVID-19の流行より、研究代表者が大学で行う教育面・研究面での業務に関して、特別な対応をとる必要が生じたことから、当初の予定通りに研究を進めることができなかった。とくに研究計画において予定していた海外出張を実施することができなかったことが大きいが、今後は、状況の推移を注視しながら、可能なところから研究を実施していきたいと考えている。
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