2019 Fiscal Year Research-status Report
著作物概念の意義及び機能に関する横断的、比較法的研究
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19K01426
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | AI生成物 / 著作物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「著作物」概念に関する様々な問題の検討を通じて、「著作物」概念の意義及び機能を明らかにし、今後の著作権制度の設計、運用に関する示唆を得ることを目的とする。 令和元年度は、AI生成物の法的保護の検討を行った。現行の知的財産法は、人の知的成果を保護する仕組みを採用しているため、現行法上、AIによる自律的な生成物を保護することは困難と考えられている。本研究も、このような基本的認識を共有しつつ、①現行の知的財産法は、価値ある情報が主として人の創作活動によりもたらされるという前提に立っているが、AIが情報創作の担い手として台頭すれば、AIによる情報創作を奨励するために、AI生成物の保護を図ることも理論的に可能であること、②AI生成物の保護根拠は、AIの開発投資にあるが、AI技術の発達に伴い、AIの開発投資は低減するため、AI生成物の保護を論じる場合には、AIの技術動向や運用の状況を注視し、AIの開発投資保護の必要性が具体的にどの程度あるかを見極めることが重要であること、③AI生成物の保護根拠が創作者の個性ではなく、開発投資にあることから、AI生成物を一般的に保護するのであれば、著作権よりも、著作隣接権等の投資保護制度によることが望ましいこと、④AIによる創作が一般化し、AI生成物が普及すれば、個々のAI生成物の価値が希釈化し、保護の必要性が弱まる一方、特定のAI生成物が商品化等により顧客吸引力を獲得し、特別な付加価値を持つ場合があることから、AI生成物一般を保護する制度に代えて、AI生成物の顧客吸引力(パブリシティ価値)に着目した保護制度を構築することも考えられること、を明らかにした。本年度の研究成果は、既に論文において公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、当初の研究計画通り、AI生成物の法的保護に関する議論の調査・分析を行い、その成果を論文にまとめ、公表することができた。それゆえ、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、当初の研究計画に従い、プロダクトデザインの著作物性に関する研究を行う予定である。プロダクトデザインの著作権法上の保護については、国内外の議論の蓄積が豊富であるため、我が国の裁判例・学説における現在の議論状況を整理、分析しつつ、比較法研究(アメリカ法・ドイツ法)にも着手したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、春に予定していた海外調査を中止したことによる。次年度使用額は、文献調査に使用し、状況が許せば、海外調査の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)