2021 Fiscal Year Research-status Report
著作物概念の意義及び機能に関する横断的、比較法的研究
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19K01426
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 著作物 / 建築の著作物 / 創作性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、建築デザインの著作物性について、比較法的検討を交えながら分析を行った。その結果、①アメリカやEUでは、建築デザインの保護が緩やかに認められていること、②わが国の著作権法は、美術的な建築物の保護を前提としているため、現行法上は、美的鑑賞性を備えたものに限って保護を認めるべきであるが、立法論としては、EUやアメリカのように、建築の著作物の保護を緩やかに認める選択もあり得ること、③建築デザインはプロダクトデザインと比べて用途による制約を受けにくく、表現の幅が広い反面、一品制作物であって意匠法の保護になじみにくい面があるため、建築デザインはプロダクトデザインと比べて著作権法の保護を正当化しやすいことを明らかにした。 次に、著作物の保護要件である「創作性」概念について、近時有力に主張されている「選択の幅論」がどのような意義を有するかについて考察した。その結果、①「選択の幅」とは、問題となる表現に著作権の保護を認めた場合に他者に創作の適切な余地があるかを問題とする概念であり、著作権による独占適応性のないありふれた表現の保護を否定する機能を有するものであること、②「創作性」を表現者の「個性の表れ」と捉える通説は、著作物の人格的側面を重視する立場であるのに対して、「選択の幅論」は、著作権による独占適応性のある表現を著作物と捉えることにより、著作物概念から人格的要素を捨象し、著作物を発明等と同じ経済財として取り扱うことを意図したものであり、多様な表現活動へのインセンティブを与えるという著作権法の目的(1条)に適合的であり、また著作権法のビジネスローとしてのフレキシビリティを高める考え方であることが明らかとなった。 以上の研究成果は近日中に論文等で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初の予定通りに、創作性概念の検討を終えることができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、創作性について比較法的検討を補充的に行うとともに、これまでの研究の総括を行うこととしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、夏に予定していた海外調査を中止したことによる。次年度使用額は、タブレット型端末の購入や文献調査に使用し、状況が許せば、海外調査の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)