2022 Fiscal Year Research-status Report
著作物概念の意義及び機能に関する横断的、比較法的研究
Project/Area Number |
19K01426
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 著作物 / 創作性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度に引き続き、創作性要件に関する応用的な論点として、①創作性の判断対象、②創作性の判断基準時、③創作性の主張立証責任、④著作物の類型に応じた創作性の判断のあり方について検討を行った。①については、著作物は「まとまりのある表現」であるから、創作性の判断は「まとまりのある表現」全体について行われるべきであること、表現の構成要素は、独占適応性のないものを除いて、創作性の考慮要素と位置付けられ、創作性の判断は、表現の構成要素の集積が全体としてありふれているか否かにより行われるべきことを明らかにした。②については、著作権が創作のインセンティブの付与を目的とした権利であることから、創作性の判断基準時は創作時と捉えられるべきであるが、そのように解する場合も、表現物の属性として客観的にありふれたものでないか否かを判断するために、創作後の状況を考慮することも認められるべきであること、表現の規格化等により事後的に特定の表現を使用せざるを得なくなる場合があるが、そのような場合には、創作性を否定するのではなく、権利行使の制限を認めることにより、後発者の表現の自由を確保することが望ましいことを明らかにした。③については、創作性要件を規範的要件と捉え、原告はその評価根拠事実を、被告はその評価障害事実を主張立証する必要があるが、著作物性があることが明らかな場合には、被告がありふれた表現であることを主張立証しなければ、創作性が肯定されるべきことを明らかにした。④については、地図やプログラム等の機能的著作物では、情報の選択と整理が重要な意味を持つため、編集著作物と同様に、量的な創作性判断がなじみやすいことを明らかにした。 以上の研究成果を踏まえて、著作権法コンメンタール(小泉直樹ほか『条解著作権法』(弘文堂・近刊))の執筆を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、創作性要件に関する主要な論点の検討を一通り終えることができたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、比較法的検討も含め、これまでの研究の総括を行うこととしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、夏に予定していた海外調査を中止したことによる。本年度は、海外調査の旅費、文献購入に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)