2020 Fiscal Year Research-status Report
Contemporary development of art works copyright
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19K01428
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 恵太 中央大学, 法務研究科, 教授 (60205911)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 美術の著作物 / 著作権 / 著作物 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、1)美術品取引をめぐる追及権立法、2)アート作品の現状調査、3)料理の著作物性、以上のテーマを中心に、研究が進められた。 1)追及権については、国際学会報告を2本行った。 学会報告1(Asian Law Institute; ASLI第17回年次大会インド国立法律大学(デリー))においては、追及権(再販売権)立法の問題点を指摘した。美術品取引のアジア域内の現状をみると、記録の残らない直接の相対取引が大きなウエイトを占めるため、取引実情の捕捉が大問題となる点を指摘した。また、追及権行使による金銭請求に応じなかった当事者に対するペナルティ(エンフォースメント)につき複数の可能性があり、特に差止め請求という著作権侵害のもっとも普通の救済策がうまくあてはめられないため、差止めに代わる実効性のある策について、可能性を紹介した。 学会報告2(IPIRA第3回年次大会ペリタハラパン大学(インドネシア、ジャカルタ))では、懸案である取引実情捕捉の方法として、仲介者が古物商であることに着目し、古物商に対する取引報告義務を課すことで古物営業許可とリンクさせて、取引内容報告の実効性を高める方法を提案した(約80%の美術品取引が捕捉できそうな方法である)。 2)アート作品の調査は、インスタレーション作品等、展示場所をアートの要素に含む可能性がある作品(鏡張りの部屋に作品を展示して立体的に見せる等)、きわめて写実的な絵画、地域ブランド産品として知られている美術工芸品ともいうべき産品(釣り針や金属製工具・刃物などがその例)や「ゆるきゃら」など、従来は美術作品(純粋美術)と認識されにくかった分野を中心に調査を実施した。 3)令和元年度に料理の著作物性を認める研究会報告を行ったが、プレートへの盛りつけ方法について著作物性を全面否定する研究が現れ、当該研究者と意見交換を行いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現代美術をめぐる研究会の発足を、コロナ禍のために見送った。美術館関係者がコロナ対策に追われ、余力がないと考えられたためである。また、緊急事態宣言等の事情で、現代アート(特に、大規模インスタレーション作品)についての現地調査を実施することができず、進捗が遅れている。そのため、デジタル配信にかかわる状況調査を、年度後半から力点に加えることとしたが、その部分では進捗があった(第3テーマ料理の著作物にかかる問題などが該当する)。
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Strategy for Future Research Activity |
デジタル制作による美術作品やデジタル配信をめぐる問題を、今後の研究対象に加えることとし、インスタレーションの調査と並行して実施することによって、研究の進捗をはかることとした。また、美術館関係者との研究会については、当初予定のメンバーに加えて新たな参加者を依頼することができたので(福岡県立美術館所属の早川園美さん、照井勝弁護士等)、令和3年度内に発足して会合を開催していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、海外調査と研究会開催が延期されたことによって、その部分の経費支出がなかったことと、インドにおける学会報告(学会報告1)およびインドネシアにおける学会報告(学会報告2)が、いずれもリモート開催に変更されたため、海外旅費支出がなかった。 今後については、コロナ禍の影響が小さくなった段階で、調査を再開するとともに、令和3年度または4年度に日本国際著作権法学会におけるシンポジウムなどの公開イベントを開催する等によって経費使用が生じる見込みである。
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