2021 Fiscal Year Research-status Report
Contemporary development of art works copyright
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19K01428
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 恵太 中央大学, 法務研究科, 教授 (60205911)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 美術の著作物 / 著作権 / 著作物 / アート |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の研究は、1)「現代美術」作品(特に、展示会場に特化して制作されたインスタレーション作品、デジタルアート)および版画作品の実地調査、2)版画と写真の相違・類似点の分析、3)美術の著作物としにくいアート作品に関する法理の検討、以上を中心に進められた。 1)実地調査は、現代美術作品を展示する国内美術館を直接訪問し、どのように展示されているか等を調査した。デジタルアートは、ディスプレイを1作品ごとに固定し、そこで1作品だけを繰り返しみせる方法が採用されることが多いとわかっている。しかし、バーチャルディスプレイ(背後を透過して見える状態での投影)の場合や、映像作品とリアルの物体の動きの組み合わせ等に、著作権法がどう対応するかは明確でない。これらの分析を進めている。2)版画作品と写真の比較分析は、版画展示がいわゆる新版画の流行を背景に多くの美術館が取り組んでいることから、調査が進んだ。「版」の取扱いや、刷りないし現像行為の創作性等の問題指摘が可能と考え、作品の調査に加え法律文献調査を行った。3)屋外に恒常的に設置される著作物は、日本では著作権を行使できないが(著作権法46条柱書)、近時注目されているランドスケープデザイン等のように、諸外国ではアートと評価される作品が日本では事実上無保護という問題に気づかされた。この場合は、著作権法では漏れてしまうアーティストの保護策として、著作者人格権とは異なるアーティストの「人格権」の検討が必要と感じている。 以上の調査結果等を中心に、概ね現代美術の問題点の抽出作業を終えつつある段階にたどりつくことができた(当初研究計画①)。なお、IT技術に対応する美術の著作物にかかる著作権法制等調査(当初計画②)については、学会報告に新動向を加筆して学会誌に公表した。追及権(当初計画③)につき、WIPOの会議がコロナ禍で進まず、昨年以降の進展はない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現代美術作品(特にインスタレーション)の実地調査に遅れが生じている。国内美術館における海外作家のインスタレーション作品の展示が行われていないことがひとつの理由となっている(コロナ禍で保険料高騰し、海外からの引っ越し展覧会が軒並み中止になったためであろう)。また、現代美術研究会も、キュレーター等関係者が緊急事態宣言対応に忙殺され、発足が遅れている(ただし、地方美術館の直接訪問によって、協力依頼のとりつけは、ある程度順調に進捗していて、キュレーター12名、アート関連をす領域とする弁護士5名から協力の承諾を得ている)。
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Strategy for Future Research Activity |
現代美術作品の展示に関する問題点は洗い出しつつあり、それを研究会(美術館職員やキュレーターを主たるメンバーとする)によって検証する作業を令和4年度中に予定していて、多様な意見を集めたいと考えている。また、日本国際著作権法学会の研究会において、美術作品に関する著作権問題を複数回とりあげる見込みがたっており、そのような意見交換の場を増やして、素材集めを更に進捗・加速させる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響のため、海外における現代アート作品の実地調査および外国における学会報告を実施できなくなり、渡航旅費を支出できなかった。次年度以降においては、コロナ禍の収束状況を見ながら、実地調査をすすめるとともに、学会年次大会及び学会研究会等の公開イベント開催によって支出が見込まれている。
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