2020 Fiscal Year Research-status Report
著作権・商標権侵害に基づく損害賠償額の実証・比較分析:TPP後に向けて
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19K01431
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金子 敏哉 明治大学, 法学部, 専任准教授 (20548250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 著作権 / 商標権 / 損害賠償 / 損害額 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に続き、著作権・商標権の損害賠償額に関する裁判例の収集、分析と検討用のデータベースの作成を進めるとともに、知的財産権の損害賠償に関して特許法に関する令和元年改正及び2件の大合議判決という大きな動きがあったことに鑑み、これらの重点的な検討と著作権法・商標法における損害算定への影響についての検討も進めた。 特に2020年度は、逸失利益の算定における寄与率や部分実施の取扱いについて、逸失販売数量(侵害行為がなかった場合に権利者製品がどれだけ販売できたか)の認定とは別に、需要者の支払意思額への影響を考慮する考え方の着想に至り、また従前の裁判例についてそのような視点も加味したうえで分析を行った。またTPP協定上の法定損害賠償に対応するものとして導入された著作権法114条4項の解釈に関する裁判例の検討も行った。 検討の成果として、特許法102条新1項2号に関する論文(金子敏哉「令和元年改正後の特許法102条1項2号の意義と解釈」同志社大学知的財産法研究会編『知的財産法の挑戦Ⅱ』(弘文堂、2020年)所収)や大合議判決に関する評釈(金子敏哉「特許法102条2項・3項に基づく損害額の算定 : 二酸化炭素含有粘性組成物事件大合議判決」判例時報2470号(2021年4月)131-139頁)を執筆するとともに、特に特許権・著作権侵害に係る逸失利益の算定における寄与率・部分実施、付随品等の取扱いについての論考(金子敏哉「知的財産との関係が『薄い』製品・サービスに係る売上減少による逸失利益」民商法雑誌157巻1号(2021年4月)47-76頁)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
著作権関係の裁判例の分析について若干作業が遅れている点があり、また新型コロナの感染状況により海外調査等ができなかった影響もあって英米法との比較の点で検討がやや遅れている。他方で特許法分野における法改正や大合議判決の検討を通じて寄与率・部分実施(利用)につき裁判例の分析と解釈論の提示をするとの具体的な成果にも至っ他店では予想以上の成果となっており、全体として見れば概ね順調に推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
裁判例の分析については著作権・商標権に関するデータベースの作成と公表に向けた作業を進めつつ、特許法との対比等の作業も引き続き行っていく。海外の議論状況との比較については、実地調査に代わる手段としてデータベースを2021年度新たに契約し、そのデータを活用した分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外調査等が新型コロナの影響により実施できなかったために次年度使用額が生じた。2021年度は、海外調査に代わる手段として、米国の裁判例に関する商業データベースを契約し、これらを活用した分析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)