2023 Fiscal Year Research-status Report
著作権・商標権侵害に基づく損害賠償額の実証・比較分析:TPP後に向けて
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19K01431
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金子 敏哉 明治大学, 法学部, 専任教授 (20548250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 損害賠償 / 商標権 / 著作権 / 実証分析 / データベース / 寄与度 / 寄与率 / 逸失利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
特許法102条を巡る大合議判決後の展開と商標法分野への影響を中心に分析に検討を行った。特許法102条1項・2項を巡る分析の成果については、2023年8月の北大サマーセミナーでの報告において発表するとともに、セミナーの参加者に対して令和2年以降の特許・意匠・商標・著作権の各法の1項1号、2項を巡る裁判所の判断内容を整理したエクセルファイルを配布し、データベースの試験的な公開も行っている。 特許法102条1項(1号)については、美容器事件大合議(2020年)による1項1号の利益額に係る事実上の推定覆滅について、その後の裁判例の動向と学説の議論状況を踏まえつつ、議論の根本的な対立軸として、逸失販売数量分の権利者製品の利益額につき常にその全額を賠償範囲とすべきかを巡る理解の相違があり、また「侵害行為がなければ」との状況について仮想的な非侵害代替品の販売を想定するか否かの点も影響していることを明らかにした。また特許法102条1項2号、2項と3項の併用についてもその考察の成果を論文としてまとめている。。 商標法38条1項・2項については、2012年以降の裁判例の動向について、特許法102条に係る大合議判決の影響を中心に分析を行い、裁判例の一覧表とともにその成果を論文として公表した。論文では、寄与度減額からの決別、適用要件を巡る議論動向、覆滅率について特許法との大きな差異として90%以上か20%以下・覆滅なしに二極化しており、中間的な覆滅率によるものが少ないこととその要因等を明らかにしている。これらの動向を踏まえて、具体的な解釈論として、商標権の保護法益(及びこれに関連する登録商標の使用や出所混同の有無)を損害論についてどのように扱うかについての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ期間中の海外調査の遅延等の影響に加えて、特許法102条についての法改正(令和元年改正)、3件の大合議判決についてのその内容(とりわけいわゆる寄与度減額からの決別)を精査し、商標法・著作権法分野の裁判例についても新たな視点から整理をし直す必要が生じたため、当初の2021年度の終了予定から、2024年度までの延長・再延長を行った。 このように研究全体としては遅れているが、特許法102条についての検討の成果と商標法・著作権法への影響の分析等の点での研究の進展も大きいところであり、全体としてはやや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年の著作権法・不正競争防止法の改正により、特許法102条と同様の改正がなされたことをも踏まえつつ、特許法102条の分析の成果を商標法・著作権法の分析に反映しつつ、従前の裁判例についてもこれらの変化を意識して分析しなおし、データベースの公開を目指す。
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Causes of Carryover |
特許法102条の議論の著作権法分野への影響についての分析について2024年度も検討を継続する必要が生じたためであり、これらに関する支出を行う予定である。
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