2021 Fiscal Year Research-status Report
サイバー空間における違法又は有害情報による被害の阻止とファクトチェック体制の整備
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19K01436
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
金 尚均 龍谷大学, 法学部, 教授 (00274150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インターネット / SNS規制 / 共同規制 / ヘイトスピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヘイトスピーチが発せられる背景にあるフェイクニュースとの関連に重点を置いた。ヘイトスピーチが社会問題化した過程においてフェイクニュースと言われるウェブ上のうその情報(以下、虚偽情報)の拡散が重要な役割を果たした。内容虚偽の情報が人々の憎悪と不安を煽り立て、被害者意識と正義感を醸成し、特定集団を社会の敵と見なして排除へと人々を駆り立てるためにヘイトスピーチが発せられる。速報性、広域性、拡散性、反復性等、SNS等のウェブ情報の特殊性に照らして虚偽情報が単なるうそではなく、人々の関心や行動を方向づけるダイナミズムに着目して2016年に欧州委員会は、大手SNS事業者に対して、ユーザの申し立てにより当該情報を内部審査し、明らかに当該国内法上違法なものについて24時間以内に削除又はブロッキングすることを求める「プラットフォーム行動規範」を策定した。これにとどまらず、2017年にドイツでは、違法情報の削除又はブロッキングの義務化とそのための事業所内の体制整備の懈怠に対する制裁として代表者に約6億円そして法人に約60億円を上限として過料を科すことを立法化した(ネットワーク上の法執行法)。これらは、民主的な決定プロセスの歪曲と、(虚偽情報を伴う)ヘイトスピーチ等による法益侵害の継続と被害の拡大そして被害者(属性を共通する集団を含む)に対する偏見と差別の助長の防止を目的として、SNS事業者に対してコンプライアンスの一環として一定の義務を課すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染状況が改善されなかったことで、海外出張が実施できていない。そのためヨーロッパにおけるSNS規制の法的状況を調査できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ウェブ上に掲載された情報はその拡散の範囲と速報性において従来の表現態様のそれとは全く異なり、かつ一般人による削除が不可能又は困難であることから、違法又は有害な情報がウェブ上に放置され、被害が拡散かつ継続し続け、他人がダウンロードとアップロード又はシェアすることで再び同じ情報が掲載される。これらのことに着目して、究極の表現の自由の場としてのウェブ空間は法的ルールから解放された例外空間なのであるのかを根本的に問い直し、SNS上の名誉毀損やヘイトスピーチ等の不当な表現による被害の拡大・継続を迅速に回避するための方策に論点を絞って、表現の自由の保障のもとでの法制度の構築を提案する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染状況が悪化したままの中で、海外調査並び研究が出来ず、十分に研究遂行が出来なかった。今年度は、2回の海外出張を予定している。
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Research Products
(5 results)