2021 Fiscal Year Research-status Report
フランスの市町村合併と合併後の広域空間における都市内分権組織の機能に関する研究
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19K01448
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 晋自 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60363909)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 市町村合併 / フランス / 新コミューン / 自治体広域連合 / 住区評議会 / アヌシー / シェルブール=アン=コタンタン |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスのコミューン(市町村)は、合併が進まないまま、その数は36,500強で長らく推移してきたが、2016-17年における合併件数の急増により、現在は35,000強まで減少している。本研究は、その背景にある2010年の新しい市町村合併制度について検討するとともに、合併後に出現する広域行政空間において、住民合議のための都市内分権組織である「住区評議会」(人口8万人以上のコミューンでは設置が法的義務)がどのように機能しているのか、合併により人口が8万人を突破した新コミューンでの現地調査を通じて、明らかにしていこうとするものである。 こうした本研究の目的を踏まえ、計画の1年目にあたる2019年度は、まず、複数のコミューンが「新コミューン(communes nouvelles)」を設立する上述の市町村合併制度について、その内容を整理するとともに、これを補完する2015年の「新コミューン体制改善法」の制定過程について、特に市町村長の全国組織である「フランス市町村長会」の動向に注目するなかで明らかにした。 また、本研究では市町村合併により人口が8万人を突破した「新コミューン」を対象とした現地調査研究も課題の一つとしていることから、2019年度にはフランス北西部ノルマンディ地方のシェルブール=アン=コタンタン市の市役所を訪問し、「新コミューン」を設立した経緯等について聞き取り調査を実施したが、計画の2年目・3年目にあたる2020年度と2021年度については、新型コロナウイルス感染症の問題があったため、新たな対象都市での現地調査が実現しなかった。 こうした事情を踏まえ、2020年度と2021年度については、現地へ渡航しなくても入手可能なデータを収集し、前年度に現地で収集したデータも活用しながら、研究活動を続行し、研究成果を論説にまとめ、公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】で述べたように、本研究は、単にフランスの新しい市町村合併制度(「新コミューン」制度)について調査するだけでなく、合併後の広域空間において住民の民主的行政統制がどのように確保されるのかについて、とりわけ、合併により人口が8万人を突破した「新コミューン」での現地調査を通じて明らかにしていくことを目的としている。 2019年度については、この条件に当てはまるシェルブール=アン=コタンタン市での現地調査が実施されているが、2020年度と2021年度については現地への渡航が叶わず、日本国内で入手可能なデータを活用することで実行可能な研究活動に止めざるを得なかったため、このような判断となった。 こうした状況を踏まえ、本研究の研究期間を1年延長した。この延長により、最終年度となった2022年度の研究計画については、次項で記述する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における問題意識の核心は、フランスで近年推進されている市町村合併により形成される「新コミューン」という広域空間において、住民の民主的行政統制がどのように確保されるのかにある。こうした問題意識から、合併により人口が8万人を突破したことで、住民合議のための都市内分権組織である「住区評議会」の設立が法的義務となった「新コミューン」を対象都市と定め、現地調査を実施することが課題となる。この条件に当てはまる「新コミューン」としては、2019年度に現地調査を実施したシェルブール=アン=コタンタン市以外にも、フランス南東部の小都市アヌシー(Annecy)市があり、2019年8月の段階では、同市役所からインタビュー調査受け入れの連絡を受け取っていたが、上述のように、新型コロナウイルス感染症の問題があったため、結局2020年度に続き、2021年度についても、現地調査は実現しなかった。 ただし、2020年春の全国一斉コミューン議会選挙の結果、アヌシー市では市政担当者の交代(中道右派から環境保護派へ)が起こり、この新市政は、選挙公約に従い、前市政下で設置された住区評議会(市町村合併により人口が8万人以上となったことに伴って設置された都市内分権組織)の抜本的な見直しに着手していることが分かった(2021年度の研究成果)。このことに着想を得て、申請をおこなった科研費(2022-2024年度)が採択されたが、本研究についても依然として解明すべき課題は残されている。 上述のように、研究期間を1年延長したことにより、2022年度が本研究の最終年度となる。新型コロナウイルスや国際紛争の問題に留意する必要はあるものの、安全を十分確保しつつ、アヌシー市での現地調査を実現したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は、フランス(都市自治体)での現地調査を前提として計画されているが、2020年度に続き、2021年度についても、新型コロナウイルス感染症の問題があり、本務校(所属研究機関)からも渡航しないよう指示を受けていたため、予算を計画通りに執行することが非常に困難であった。研究計画を1年延長した結果、2022年度が本研究の最終年度となるが、新型コロナウイルスや国際紛争の問題に留意しつつ、本研究を推進していく所存である。
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