2019 Fiscal Year Research-status Report
Political Economy of Human Capital Formation in South Korea
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19K01451
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人的資本形成 / 政治経済学 / 韓国 / 東アジア / 経済成長 / 教育 / 労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人材育成による急速な経済発展を達成した韓国が、なぜ現在は適切な人的資本形成に苦慮しているかを解明し、非欧米的な発展パターンをとった東アジアの先進国を、比較政治経済学の事例研究として位置づけることにある。 韓国の急速な経済成長に関して、人的資本形成の要である教育の拡大と制度的機能が評価されてきたが、現在ではとりわけ高等教育を受けた人材の需給バランスが崩れ、教育制度改革が課題となっている。本研究では、開発途上期には有効だった制度が機能不全になった過程をミクロ視点も導入して検討し、現在の制度改革の試みが効果的な結果をもたらしていない要因を解明する。日本でも教育への公的負担の低さが問題になっており、「東アジアの奇跡」の成功要因とされた人的資本形成が、現在直面する課題を解明することで、日本の抱える問題も相対化して捉える。欧米とは異なる経路で成長してきた東アジアの先進国が、経済社会構造の転換を迫られる現在の対応を検討する事例として韓国を行い、比較政治経済学にアジアの事例を位置づける糸口を探る研究である。 研究初年度の2019年度は、問題設定の枠組みと韓国の事例の位置づけ、日韓比較の方法等を検討し、韓国が公的負担の少ない教育国になった要因に関して、学会や研究会で報告を行った。2019年10月に日本政治学会において、「人的資本形成をめぐる政治経済学-韓国はなぜ公的負担が少ない教育国になったのか」というタイトルで分科会報告を行い、仮説の実証が弱い部分について有益な指摘を得ることができた。また、2020年2月に経済学者も含めた「新興国の経済政策比較研究会」で「韓国の人的資本形成をめぐる政治経済学」を報告し、データの国際比較についてアドバイスを得ることができた。これらの報告では、研究の枠組み設定に関しては概ね好評であり、実証面での今後の課題が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体の大きな枠組みと1年目の研究成果について学会や研究会で報告し、討論者や参加者との議論を重ねたことで、今後の課題についても明確になった。 新型コロナウィルス感染拡大によって、年度末に予定していた韓国現地での調査が実施できなくなるなど、年度末になって研究遂行に支障を来す事態が生じたが、学会報告を軸に展開した研究は、初年度としてはおおむね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2020年度は、初年度に明らかになった課題に取り組み、実証面を強化していく。新型コロナウィルス感染の拡大によって研究活動も大きな制約を受けているが、オンラインで利用可能なデータで研究を進め、可能となった段階で現地調査を行う。それと同時に、成果をまとめる準備を進めるため、研究会での報告を重ねていく。
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Causes of Carryover |
2019年度の前半は長期国内外研修で在外研究期間も多く、本研究費から海外旅費を支出する必要がなかった。また、9月以降には学務が再開し、本研究は10月の学会報告準備を中心に進め、授業期間が終了した年度末に、海外での調査・研究を行うことを予定していた。しかしながら、新型コロナウィルス感染の拡大によって海外渡航が困難となり、その分の研究費使用が無くなってしまった。そのため海外旅費の使用がなかったのみならず、本研究に関する学会・研究会報告もすべて都内で行われたため、本研究費からの旅費支出はないまま、年度が終了してしまった。 2020年度は、現地調査の実施が可能となったらすぐに実施できるよう準備を進めると同時に、現地の資料やデータのオンラインでの調達・購入に費用を割くなどの方法で対応を図り、状況に適応するかたちで研究を推進していく。
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Remarks |
研究会報告:磯崎典世「韓国の人的資本形成をめぐる政治経済学」科学研究費補助金・基盤研究(B)「ポストネオリベラル期における新興民主主義国の経済政策」主催「新興国の経済政策比較」研究会、2020年2月。
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Research Products
(1 results)