2021 Fiscal Year Research-status Report
Political Economy of Human Capital Formation in South Korea
Project/Area Number |
19K01451
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 人的資本形成 / 韓国 / 経済成長 / 教育 / 労働 / 脱植民地 / 文在寅 / 李承晩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、韓国の急速な経済発展の要因として人的資本形成に注目し,非欧米的な発展パターンをとった過程を,日本との比較も含めて検討することにある。方法としては人的資本形成の要となる学校教育の拡大や技能形成システムの構築に着目し,韓国が「公的負担の少ない教育国」となった過程を検討する。さらに,かつて有効だった制度が機能不全となっている現状と,政治課題となった改革の成果が出ない原因を解明する。 初年度の2019年度は,韓国の学校教育拡大が公的負担の少ない形態で実現した過程を検討し,仮説や実証の目処をつけた。2020年度は,新型コロナ禍で現地調査が困難になったために入手できる資料で研究を進め,日本の植民地に導入された近代教育制度が脱植民地・建国の過程でいかに再編され,人的資本形成の初期制度がどう構築されたかを検討した。2021年度も現地調査を実施できず,以下の2点を中心に研究を続行した。 第1に,前年度に引き続いて初期の制度構築に関する研究を行った。これは,米国で高等教育をうけて解放後に帰国した李承晩が,植民地下の教育をうけたエリート勢力との権力抗争に勝利し,初代大統領として執権したことで,日本が導入した制度はどう継承・断絶したのかという問題と関連する。研究成果の一部は,建国期の政治体制研究の共著として刊行された。 第2に,近年の制度改革をめぐる問題の解明を,文在寅政権期に焦点をあてて実施した。同政権は,保守政権による社会経済政策からの転換を掲げて人への投資等の改革を唱えたが,当初に掲げた改革は成果をあげず政策の重点は変化した。同政権の改革政策と実施過程および挫折の要因を解明し,成果をまとめた論文を投稿した(現在査読中)。 今年度も現地調査ができない制約はあったが,初期の制度構築と文在寅政権期の改革挫折に焦点をあてて研究を遂行し,成果の一部を共著刊行と投稿論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの拡大で韓国での調査・資料収集が困難になり,国内での研究環境も悪化して,予定通りに研究を進めるのが困難となった。本年度は,実績概要にまとめた成果をあげることができたが,現地調査等が2年間実施できなかったことで,当初3年間で実施する予定だった計画は完了せず,研究計画期間を延長せざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地調査ができずに研究計画が予定通りに進まず遅れが生じたため,研究期間を1年間延長して研究を継続する。2022年度は,文在寅政権期の「制度改革をめぐる政治」をより実証的に検討して,当初の計画で提起した重要課題の解明に取り組む。引き続き現地調査が困難な可能性を想定してオンライン調査の導入など研究方法を修正し,それらをまとめた内容を学会で報告してレビューをうけ,4年間の研究をまとめる予定である。
|
Causes of Carryover |
2021年度は,新型コロナウィルス拡大の影響で国内・海外での出張・現地調査ができず,旅費の使用がなかった。データ整理等の人件費も発生せず,次年度使用が生じた。 2022年度は,計画の中心課題である近年の制度改革をめぐる政治対立に焦点をあてて,研究を進める。これは,政権が推進する改革の成果が出ない要因の解明も課題である。引き続き海外出張や現地調査が困難な可能性もあるので,2022年度は研究方法を修正してオンライン調査の実施し,そうした新たな調査方法に支出する計画をたてている。
|
Research Products
(1 results)