2019 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける二大政党の分極化は司法をどう変えたのか―下級審裁判官の指名の分析
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19K01452
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡山 裕 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70272408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ / 司法 / 大統領 / 二大政党制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半世紀近く進んできたアメリカにおける二大政党のイデオロギー的分極化が、連邦の下級審裁判官の構成をどう変えてきたのかを、大統領による司法人事に着目して分析することにしている。カーター政権以降の全人事に関する大統領の指名を対象にした計量分析と、カーターおよびオバマ政権による司法人事の質的分析を組み合わせることとし、研究初年度の本年度は、先行研究のより丁寧な精査と、量的分析に関するデータセットの整備を中心に進めた。 まず先行研究に関しては、かつて研究代表者が行った研究以外にも、大統領による指名のタイミングを数十年単位で分析した研究がいくつか存在することがわかった。それらはいずれも有意義な研究で、本研究課題にも参考になるが、全体に大統領による司法人事を恒常的に規定している要因の抽出を目指すものが多い。それに対して、本研究課題では、二大政党の分極化を通じて大統領の人事指名の態様がどう変化してきたかに関心があり、この点で本研究のオリジナリティは担保できることが再確認できた。 次にデータセットの整備であるが、カーター政権以降の下級審裁判官指名人事について、大統領による指名後に行われる上院での審査の分析を念頭に作成された既存のデータセットを時期的に拡張し、必要な変数を補う形で進めた。指名された候補者の人種など一部のデータについては、所属機関で使えるデータベースなどでは入手できないため、2019年9月に米国連邦議会図書館で1週間の調査を行い、進捗がえられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。計量分析に関して、現在考慮したいと考えている変数に関しては、一部どのように効率よく入力するかという問題の残っているものがあるものの、データの入手自体が困難だというものがないことが判明したことは大きい。また先行研究を精査する過程で、研究代表者がこれまで把握していなかった有用なデータセットの存在が判明した。これと組み合わせることで、データセットの拡張が容易になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本研究課題の初年度については順調な進捗をみたものの、今後の推進について課題が発生している。本研究課題は、質的・量的分析を組み合わせることを特徴とするが、2020年度に本格的な文書館調査を実施する予定であったところ、新型コロナウィルスの蔓延により、それがかなり難しくなったのである。感染収束の目途は立っていない以上、2021年度以降についてもこうした調査ができる見込みを立てるのは困難といわざるを得ない。 そのため、本研究課題については、当初から大きく研究計画そのものを組み替える必要に迫られている。具体的には、元々予定していたカーター政権以降の分析を、計量分析中心のものに組み替えたうえで、本年度に入手した新たなデータセットも活用して、分析対象時期をより長期に拡張する。そのうえで、二大政党が分極化してきた過去半世紀における司法人事の特徴を、より長期的な視野に位置づけることを考えている。 ただし、こうした新しい研究方針をどのようにするかは、現在検討を進めているところである。研究代表者は2020年度一杯、アメリカで在外研究を行う予定であるが、滞在先の研究機関が図書館も含めて閉鎖されており、そのなかでいかなる調査が可能なのかと考え合わせて極力有意義な計画を立てたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度については、本研究課題に取り組む前に実施していたアメリカの情報公開制度に関する科学研究費による研究課題の延長による最終年度と重なっていた。そちらの研究とりまとめに時間を要したため、本研究課題について次年度使用分が発生した。これについては、元々次年度に予定している質的分析のための文書館調査を充実させるために支出する見込みであったが、上述の事情で2020年度中に文書館調査を行うこと自体が難しくなった。そのため次年度使用分は、分析の時期的範囲を拡張し、その分のデータセットを整備するために必要な資料の購入に充てることを考えている。
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Research Products
(3 results)