2023 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける二大政党の分極化は司法をどう変えたのか―下級審裁判官の指名の分析
Project/Area Number |
19K01452
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡山 裕 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70272408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大統領 / アメリカ / 司法 / 裁判官人事 / 官僚制 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の最終年度である2023年度には、前年度に引き続き大統領による行政官経験者の裁判官候補への指名に着目して分析を進め、また研究全体のとりまとめを進めた。 新たに進めた分析としては、次の2点がある。第1に、前年度から進めている、行政官経験者の控訴審ポストへの指名について、ジョン・ロバーツやサミュエル・アリートといった、後に最高裁裁判官となった人物を中心にどのようにして指名に至ったのかを検討した。こうしたアプローチは、対象が共和党側の人物に偏るなど限界を抱えるものの、他の多くの候補者と違い、指名までの具体的な経緯に関する情報が入手可能であるというメリットがある。エリート法曹には様々なコネクションが存在し、個人の能力や考え方に関する情報がそこで共有される中で、政権での行政実務経験が裁判官ポストへの指名にどう影響するのかという観点から分析を進めた。 第2に、地方裁判所ポストへの行政官経験者の指名に関する分析を行った。控訴審ポストほどではないが、オバマ政権以降地方裁ポストに行政官経験者が指名される割合が増えている。控訴審ポストへの指名については、多かれ少なかれ後の最高裁ポストへの指名も意識して行われるとみられるが、地方裁への指名にあたり政権が対象者のキャリアをどう意識しているのかの検討はほとんど行われてこなかった。ただ現段階では、政権が上位審ポストへの有力候補者のプールとして地方裁ポストを活用する傾向が強まりつつあるのではないか、という仮説を提示するにとどまっている。 当該年度には、以上の分析も踏まえて、研究全体のとりまとめを進めた。大統領が自分の政策の「寿命」を伸ばすだけでなく、自らの権力行使を容易にするためにも司法人事が行われている、という主張をベースに議論を組み立てているところである。
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