2019 Fiscal Year Research-status Report
欧州「周辺」における第一次大戦の衝撃と政治変動-バルカンとイベリアの比較から
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19K01453
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
藤嶋 亮 國學院大學, 法学部, 准教授 (70554583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 祥 関西学院大学, 法学部, 教授 (40508363)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / 政治変動 / バルカン / イベリア / 権威主義体制 / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画初年度にあたる今年度は、①分析枠組の構築に向けた準備作業と、研究チーム内での役割分担の明確化、および②各担当地域(バルカン半島、イベリア半島)についての一次史料・二次文献の渉猟を行った。 ①については、2度(2019年6月および2020年2月)にわたる研究打ち合わせを行い、また電子メールを用いて適宜意見交換を行った。その結果、研究代表者(藤嶋)と研究分担者(武藤)が、各自の専門とする地域について実証分析するだけではなく、1920年代に関して武藤が、1930年代に関して藤嶋が、地域を横断して応用できる、政治変動の分析枠組を考案するという方針を決定した。その際、武藤は19世紀末から20世紀初頭という、第一次世界大戦以前との連続性を意識すること、藤嶋は専門とするファシズム運動が1930年代以降の政治変動にもたらしたインパクトを重視することを確認した。 ②については、藤嶋は2020年2月にブカレストにて史料調査を行った。また武藤は、2019年9月からマドリード・コンプルテンセ大学における在外研究を開始したため、現地の各史料館での史料調査および、日本では入手の難しい二次文献の収集を進めた。併せて2019年10月と12月には、ポルトガル・リスボンにて史料調査を実施した。 以上を踏まえ、戦間期の政治変動を分析するための予備的考察として、藤嶋亮「戦間期東欧政治史への/からの問いかけ-権威主義体制論と比較ファシズム論の視座より-」(『東欧史研究』第42号)を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、本年度は当初の計画に即して、おおむね順調に研究を遂行することができた。特に分析枠組の構築に関しては、活発な意見交換を行うことにより、バルカン半島・イベリア半島という本計画の(時代的・地域的)射程を超えた、より普遍性が高く、かつ野心的な枠組を志向していくべきという合意が得られた。 また、藤嶋はルーマニアでの史料調査によって、本研究の進展に大きく寄与する一次史料およびモノグラフを入手することができた。武藤は在外研究中、現地での研究会・セミナーなどに参加し、スペイン現代史研究の最新の動向に触れ、若手を含む多くの研究者と交流の機会を得ている。同様に、最新のモノグラフなどを入手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初計画に従い、引き続き、戦間期のヨーロッパ「周辺」の政治変動を分析するための理論枠組の構築を進める。その際、フアン・リンスの「民主政の崩壊」論などの古典的な研究の再検討を行うことはもちろん、現在活況を呈している権威主義体制についての新たな研究動向の成果を踏まえ、その応用可能性についても幅広く探っていきたい。 同様に、研究代表者と研究分担者が、各自の専門地域についての史料や文献の渉猟・収集を続ける。ただし、現在(2020年5月時点)猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の影響で、日本とヨーロッパの往復だけではなく、ヨーロッパ内の移動にも大きな支障が生じている。このため、少なくとも今年度に関しては、現地での史料調査を予定通り遂行できるかは不透明な状況である。この点に鑑み、場合によっては本研究計画の実施期間を延長することも視野に入れて検討したい。 なお、当初の研究計画に記した通り、2021年度には本計画の中途報告として、学会でパネルを立てることを検討している。本研究計画での視座をバルカン半島・イベリア半島を超えて応用できるかどうかを吟味するため、トルコや日本など、他地域の政治史研究者をパネルに加えたい。そのための人選や事前打ち合わせを、2020年度中に進めていきたい。 また、研究分担者は2020年度より、科研費の「国際共同研究強化(A)」に新たに採択された(研究課題名:20世紀前半のイベリア半島政治史における「権威主義的文脈」)。これは本研究計画との親和性が高く、またスペインをはじめとする海外研究者との共同研究を念頭に置いたものである。この2つの研究課題を連動・接合させることで、本研究計画を国際的水準のものへと発展させることが期待できる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により、現地での資料調査計画の縮小を余儀なくされたことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。2020年度は、とりわけ夏以降に、研究代表者と研究分担者が現地での資料調査・収集を集中的に行うことで、経費を計画的に使用していきたい。
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Research Products
(3 results)