2020 Fiscal Year Research-status Report
欧州「周辺」における第一次大戦の衝撃と政治変動-バルカンとイベリアの比較から
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19K01453
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
藤嶋 亮 國學院大學, 法学部, 教授 (70554583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 祥 関西学院大学, 法学部, 教授 (40508363)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / 政治変動 / バルカン / イベリア / 権威主義体制 / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大とその長期化により、予定していた現地での資料調査・収集を実施できなかったため、主として①分析枠組の精緻化と、②(国際)共同研究の組織化を進めた。 ①については、研究代表者(藤嶋)と研究分担者(武藤)が二次文献を用いて戦間期欧州「周辺」における政治変動を分析するための枠組の検討・整理を行った上で、(分担者が在外研究中ということもあり)オンライン上での複数回の研究打ち合わせを実施した。この結果、1)「反動性」と「革新性」(さらには両者のバランス・混合)という視角から見た場合の、1920年代と1930年代における非民主的体制の位相の相違、2)統治原理としてのコーポラティズムの受容・普及、3)「国民統合の危機」への着目、4)上述の観点から見た、またバルカンとイベリアの比較を行う上での「結節点」としてのギリシャとオーストリアの事例の重要性などが確認された。以上の検討も踏まえ、分担者(武藤)はProgramme POST-DEMA(マドリード)において、「La dictadura constitucional: Constitucion del Estado Novo y Leyes Fundamentales del Regimen de Franco」という表題で報告を行った。 ②については、分担者(武藤)は、戦間期のスペイン政治史、スペイン・ファシズムを比較の観点から分析する現地の研究者(同分野の第一人者だけではなく、新進気鋭の若手研究者も含む)と共に、国際学会での報告や共著の編集・出版を視野に入れた、共同研究体制の構築を精力的に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、本年度は分析枠組の精緻化と(国際)共同研究の体制整備を進めることができた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大とその長期化により、予定していた現地での資料調査の実施が1年間を通じて困難となったため、一次史料を用いたルーマニア・ブルガリア及びスペイン・ポルトガル各国政治史の実証研究を十分に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、現地での資料調査・収集が困難な状況が予想される。本研究計画は2021年度が最終年度であるが、こうした事情に鑑み、1年間の延長を検討する必要がある。 したがって、可能な場合には現地での資料調査・収集を精力的に実施し、一次史料に基づくルーマニア・ブルガリア及びスペイン・ポルトガル政治史の実証研究を着実に進めたい。他方で、現地での資料調査・収集が困難な場合でも、二次文献及びすでに収集した一次史料を用いて実証研究を進めるとともに、オンラインツールを活用し、研究の進捗状況の確認や相互の研究成果の吟味をより頻繁に行っていきたい。 また、2022年度に学会(日本比較政治学会を想定)でのパネル報告を行うための準備を進める。具体的には、本研究計画での視座をバルカン半島・イベリア半島を超えて応用できるかどうかを吟味するために、「民主化途上」体制という類似点がある日本やラテンアメリカなど、他地域の政治史研究者を含めてパネルを構成する。そのための人選や事前打ち合わせについては、2021年秋までに行う。 なお、研究分担者(武藤)は2020年度より、科研費の「国際共同研究強化(A)」(研究課題名:20世紀前半のイベリア半島政治史における「権威主義的文脈」)に基づき、スペインをはじめとする海外研究者との共同研究の組織化を進めている。これは本研究計画との親和性が高く、分担者が構築したヨーロッパのファシズム研究者のネットワークを活用することで、国際学会での報告を始め、本研究計画を国際的水準のものへと発展させることが期待できる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大とその長期化により、現地での資料調査計画の実施が極めて困難となったことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。2021年度は、ルーマニア・ブルガリア及びスペイン・ポルトガルでの資料調査の実施が可能となり次第、研究代表者と研究分担者が現地での資料調査・収集を集中的に行うことで、経費を計画的に使用していきたい。
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Research Products
(3 results)