2019 Fiscal Year Research-status Report
Developing "Electoral-Professional Party" Concept: Analysis of Party Function in East-Central Europe
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19K01457
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
中田 瑞穂 明治学院大学, 国際学部, 教授 (70386506)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選挙プロフェッショナル政党 / 東中欧 / 政党類型 / 選挙マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず、研究の方向性を見定めるためのケーススタディとして、選挙プロフェッショナル政党の事例として注目される、チェコの政党「ANO」について、2015年の欧州難民危機時の対応に絞って分析し、論文として発表した。その中で、難民受け入れに対して拒絶的なナショナリズム色の強い言説は、ANOの元来の主張にはなく、難民危機を利用して人気をとるために手段として採用されたことを示した。そのために難民がチェコにとって危険な存在であるというプロパガンダがなされたことによって、世論も元々中立的であったものが、難民を危険視するように変化している。このように、政党がもともと綱領的に右翼的な立場をとっているわけではなく、選挙戦略としてそのような立場が採用されるという点、世論自体が作られていくという二つのポイントを確認した。今年度はアメリカ合衆国、ロスアンジェルス市のCenter for European and Russian Studiesなどで、このような視点について他の研究者と意見交換をする機会をもった。 加えて、チェコとスロヴァキアについて、政党の選挙ストラテジーの分析についてのデータ収集を進め、言説分析を始めた。 また、本研究の対象である東中欧の新しい類型の政党についての理論的側面についても検討し、国際学会を含むいくつかの学会で報告を行った。これらの政党は政策内容的には反立憲主義的、illiberalだが、公正な選挙で選ばれた政党指導者による多数決での行動という意味では民主的であると位置づけられるが、自党が国民全体を代表するとし、他の政党の代議政党としての正当性を否定する言説に注目すべきであり、それが政党間関係、ひいては代議制民主主義を変質させている可能性を指摘し、他の研究者からの有益なコメントを得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケース分析、理論的な枠組み形成については、ほぼ予定通り進んでいる。前者については、複数の学会で報告し、一部公刊することもできた。さらに、学会報告を基にした論文についても、2020年度中の出版が見通せる状況にある。今年度の秋学期は、アメリカの協定校に交換教員として派遣されていたために、春休みではなく、11月に出張することができたのも幸いであった。 資料収集については、チェコとスロヴァキアについてはその作業をすすめることができた。ポーランドとハンガリーについての作業をさらに進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
政党資料収集については、特にポーランドとハンガリーを中心にさらに進めていく計画である。また、今年度は先行研究のアップデイトのための新刊書の購入を行う予定である。 2020年度は、現地出張によって、政党当局者、政党研究者、政党のマーケティング戦略研究者へのインタビューを試みることを計画している。2020年度春学期のサバティカルを利用して、現地に中期滞在してそれを実行できればと考えていたが、春の時点では新型コロナウイルスの感染予防のため、対象諸国が出入国を禁止しており、日本も渡航中止を勧告している。そのため、夏季、春季休暇を利用しての短期調査に切り替える予定である。 理論面について分析もさらに進める計画であり、秋には日本政治学会での学会報告も予定している。
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Research Products
(4 results)