2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01458
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
原田 久 立教大学, 法学部, 教授 (70275460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦立 秀朗 京都産業大学, 法学部, 教授 (00387995)
藤原 真史 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20366975)
河合 晃一 金沢大学, 法学系, 准教授 (50746550)
小田 勇樹 大阪成蹊大学, マネジメント学部, 講師 (60794378)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 独立行政法人 / 自律化 / PDCAサイクル / 国立研究開発法人 / 政策実施組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,独立行政法人の政策実施組織化の進展状況を探るべく,独立行政法人通則法の改正(2014年)が独立行政法人の主務大臣に対する自律性にいかなる影響を及ぼしたのかについて研究を行った。 本研究がまず明らかにしたのは,独立行政法人制度における政策に関するPlan-Do-Check-Actionサイクル(以下,「PDCAサイクル」と略)のP(計画)の局面では主務大臣による目標策定を通じた独立行政法人の事前統制が強化されたということである。したがって,当該局面における独立行政法人の主務大臣に対する自律性は制度改正前と比べて制約されたことになる。他方で,独立行政法人の類型化,とりわけ国立研究開発法人類型の創出という制度改革が主務大臣による目標策定を通じた独立行政法人の統制に与えた影響を析出するには至らなかった。 ところが,独立行政法人制度における政策に関するPDCAサイクルのうち事後統制に相当するC(評価)及びA(改善)の局面では中(長)期目標の詳細化が主務大臣の独立行政法人への改善事項の指摘につながってはいないことが明らかになった。むしろこの局面では国立研究開発法人に移行した独立行政法人の主務大臣に対する自律性が制度改正前に比べて高まったことを明らかにした。 以上の考察により,本年度の研究では制度改革が独立行政法人の主務大臣に対する自律性に与えた影響は政策に関するPDCAサイクルを通じて一様ではなく,事前統制の局面と事後統制の局面で異なっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の総括と海外調査を担当している研究代表者(原田)は,ドイツにて首相の行政組織編成権に関する文献・資料収集を行うとともに(2019年8月),独立行政法人の主務大臣に対する自律性に関するデータ・セットを構築した。当該データ・セットを用いた分析結果は,研究代表者,研究分担者,研究協力者及び総務省行政管理局職員が参画する研究会(2019年11月)における議論を経て論文として公表した。また,その研究成果の一部は,研究代表者がモデレーターを務めた総務省主催「独立行政法人シンポジウム~社会的課題の解決に向けた独立行政法人への期待~」(2019年9月)を通じて広く府省職員や独立行政法人職員に還元した(参照,総務省広報誌「総務省」2020年1月号12~13頁)。 次に,独立行政法人の「理論」担当の研究分担者(河合)は,行政実務家との上記研究会にて「独立行政法人の類型化再考」と題する研究報告を行った(2019年11月)。当該研究分担者は当該研究についてアメリカ政治学会や日本行政学会においても報告を行った(2019年5月,8月)。また,独立行政法人の「計量」担当の研究分担者(小田)は,行政実務家との上記研究会にて「エージェンシーの業態と業績評価の関係」と題する研究報告を行った(2019年7月)。当該研究報告と関連する研究成果は単著として公刊されている(2019年10月)。さらに,独立行政法人の「歴史」担当の研究分担者(藤原)及び独立行政法人の「空間」担当の研究分担者(芦立)は,各研究分担領域の文献・資料収集を進めるとともに,上記研究会において積極的に議論に参画した。二人の研究分担者による研究成果は,今年度開催予定の研究会において発表される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度における研究代表者(原田)による研究では,2014年の独立行政法人制度改革が独立行政法人の主務大臣に対する自律性に与えた影響は政策過程を通じて一様ではないこと,特に政策のPlan-Do-Check-ActionサイクルのうちC(評価)及びA(改善)の局面では国立研究開発法人の自律性が高まった可能性があることを明らかにした。しかし,昨年度の段階では,国立研究開発法人に移行した独立行政法人が独立行政法人通則法改正前から有していた自律性の程度を考慮することなく結論を導いているところに課題が残っていた。こうした課題を解決するには,制度改革前の時点において各独立行政法人の基本的属性(例えば,人的規模や国庫依存度など)が交絡変数として独立行政法人の主務大臣に対する自律性に間接的に与えていた影響を除去した上で分析を行う必要がある。 そこで,2020年度は前年度に構築したデータ・セットを用いた準実験的研究(quasi-experimental study)を行うことにより,各府省による国立研究開発法人類型の選択が当該独立行政法人の主務大臣に対する自律性に与えた因果効果を実証的に分析する。その研究成果は,2019年度と同様,研究代表者,研究分担者,研究協力者及び総務省行政管理局職員から構成される研究会において報告し(3回程度開催予定),論文として公表する。また,研究分担者による2020年度の研究については独立行政法人の「歴史」研究(藤原)と「空間」研究(芦立)を中心に行い,研究代表者による研究との統合を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,研究分担者(藤原)が3月に予定していた国立国会図書館における独立行政法人関係の資料収集が,コロナウィルス感染症の感染拡大による臨時休館によりできなくなったためである。 そのため,当該資料収集は,コロナウィルス感染症に係る非常事態宣言の解除後,東京在住である研究代表者(原田)が研究分担者(藤原)に代わって行う。次年度の使用計画としては,国会図書館等での資料収集費用と独立行政法人制度創設に関わったインタビューへの謝礼等に充てる。
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