2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K01463
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石川 涼子 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (20409717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化的権利 / 多文化主義 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、文化的多数派の権利が少数派の自由と衝突する局面に注目して研究を進めた。なかでも、言語的正義(linguistic justice)をめぐる議論においては、自尊心の尊重を根拠としてローカルなレベルでの言語保護政策を認める議論がなされるが、これが文化的多数派の側の女性にとっては抑圧として働くことを考察した。この研究内容については、韓国で開催されたフェミニズム研究の国際カンファレンスで報告した。
また、2023年3月には文化的多数派の文化防衛の観点からの、移民の政治理論の研究会を実施した。対面で実施されたこの研究会では、岸見太一氏(福島大学)「『住民』の境界と入国管理政策:日本の事例から考える」、および白川俊介氏(関西学院大学)「領土的一体性と国境管理──自決理念の検討を手がかりに」が研究報告を行い、河村真実氏(神戸大学)と石川がコメンテーターを務めた。岸見報告は、埼玉・芝園団地における古い日本人住民と新しい外国人住民との間の摩擦の事例を手掛かりに、「多数派」の自己決定の要望が正当化できるかを考察したもので、多数派による自己決定は全面的には正当化できないと結論づけた。白川報告は、デモクラシーの、人々が政治的意思決定に参加し、自分たちに関わる事柄について、自分たちで決めるという理念に注目して国境管理あるいは入国管理の正当性を考察するもので、自決権は、国境管理・移民排除の正当化根拠にはならないと主張するものだった。いずれの報告も、移民をめぐる日本の議論に政治理論研究から切り込むもので、こうした応用研究の可能性を示す研究会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の二年間に、子供のケアに時間を取られ、研究がほとんど進められなかったことが大きく影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
子供も小学校高学年となり、手がかからなくなったこと、またコロナ禍がほぼ終焉を迎えたことから、今年度は研究を通常通り進められることが見込まれる。大学では国際部副部長の役職についており、パンデミックの終焉とともに学生の往来も増え、業務も増加していることが研究を進める上での課題である。できるだけ研究時間を確保し、最終的な研究成果を論文としてまとめる時間を取るように努力する。
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Causes of Carryover |
研究計画遂行の遅れにより、本研究のまとめとなる論文の作成が遅れたため生じた国際ジャーナルへの投稿に関連する英語論文校正等の費用、および文献購入費である。最終年度である2023年度に論文を完成させて執行する計画である。
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