2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01463
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石川 涼子 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (20409717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化的権利 / 言語正義 / 多文化主義 / インターセクショナリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの多文化主義をめぐる研究では、文化的少数派の権利がリベラリズムの観点から容認できるかがもっぱら問題にされていたが、難民や移民の急激な増加により欧州各国で多数派の文化が危機に瀕しているという意識が高まり、従来は文化的少数派がとってきた文化防衛(cultural defense)のための施策が多数派の文化に関してとられ始めている。だが、こうした多数派の文化防衛が、少数派と同様にリベラルな諸原理と整合性を持つのかについては 理論的研究が進んでいない。そこで本研究は、文化的多数派の文化防衛がリベラルな諸原理に適う正当性を持つかを考察してきた。 最終年度の2023年度は、文化的多数派の文化的権利の特殊性について、言語正義論の観点から考察する論文の執筆を進めた。これまでの言語正義論は、多数派言語と少数派言語の間の権力関係に関する正義を論じてきたが、言語集団内部の多様性や権力関係についてはほとんど考察していない。だが、フェミニスト多文化主義論が示してきたように、文化政策は文化集団内部に不正義を引き起こしうるので、言語文化集団内部の少数派である女性が経験する不正義も考察すべきである。そこで、言語間だけでなく言語内部の正義を追求する必要性を示すことで、言語正義論の新たな研究視角として、フェミニスト言語正義論を提唱することを試みた。しかし、本論文は年度中の論文掲載には至らなかったため、可及的速やかに論文の出版を目指す。
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