2019 Fiscal Year Research-status Report
A Philosophical Inquiry on a Construction of a Global Theory of Migration
Project/Area Number |
19K01465
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
白川 俊介 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (50737690)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リベラル・ナショナリズム / 人の移動 / グローバル正義 / 頭脳流出 / 中立性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、A.理論的な予備的考察:リベラル・ナショナリズム論のグローバル正義論の批判的陶冶および、B.移住にかかわるいくつかの関連する哲学的課題についての考察、という二つの研究を柱としている。当初、今年度はAについて主として行う予定としていたが、準備状況に鑑み、Bの①貧困国は「出国」(emigration)をいかに制限しうるのかという問題に取り組んだ。この点については、人の移動のとりわけ「退出」の次元に焦点を当て、国家が個人の退出の権利を規制できるかどうかについてその正当化事由を検討した論文「健康格差・頭脳流出・グローバル正義──『退出の権利』に対する制約の正当化に関する一考察」として活字化することができた。 また、人の移動は、必然的に移民を受け入れる社会における移民の包摂や排除、さらには政治参加といった問題を引き起こすことから、本研究との関連で、その点についてリベラリズムの政治哲学は何を言えるのかという点を考察する必要がある。したがって、マイノリティの包摂/排除について、とりわけ国家の中立性の解釈に焦点を当てて検討した論文「リベラルな社会はいかなる意味で多様な集団に対し『寛容』でありうるか―『中立性』概念の検討を手がかりに―」を執筆した。 さらに、本年度は、本研究の内容と大きくかかわる、マーガレット・ムーア著『領土の政治理論』の翻訳作業を行った。これについては、2020年度に刊行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、とりわけ翻訳作業に多くの時間を割いたために、研究計画と比して、アウトプットまでいかなかったという意味では、若干の遅れが生じてはいるとはいえる。ただし、文献の収集や分析など、アウトプットのために必要なインプットにはそれなりに時間を費やすことができているので、研究計画全体として大きな遅れが出ているとは考えていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はいまのところなく、当初の計画通り進めて行くことにする。ただし、上記アウトプットという意味では、昨今のコロナ禍によって研究会・学会が軒並み中止となり、口頭発表および他の研究者との交流の機会が失われていることが懸念されるので、オンラインなどを活用し、できるかぎり多くの研究者と意見交換の機会を持ち、そうした知見を活かした形で活字化できればよいと考えている。
|
Causes of Carryover |
旅費として使用予定であった額が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2月から3月にかけて参加予定であった研究会がキャンセルされたため使用できなかった。次年度以降、研究会の開催は不透明な状況であるので、この残額は、次年度の物品費の一部として図書の購入などに充てたい。
|