2020 Fiscal Year Research-status Report
Kingship and Monarchism in the Stuart Britain
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19K01473
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 九州大学, 法学研究院, 教授 (80305408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 王権 / 君主政 / ブリテン / ジェイムズ1世 / ベン・ジョンソン / エンブレム / 君主教育 / 人文主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「王権」kingship と「君主政」monarchy の観点から17世紀のイギリス政治思想史を見直し、「君主主義」の政治学や「ブリテン」の君主論を明らかにすることを目的としている。 当該年度においては、昨年度から続けてきたジェイムズ6世・1世(スコットランド王1567-1625, イングランド王1603-1625)やフランシス・ベイコンといった顧問官、行政官、法律家による王権論や君主論に加え、古代から現代にかけての君主制の思想史の展開、王政復古期までを対象に含めた「文明化された君主国」をめぐる議論の理解を深め、その研究成果の一部を単著『想像と歴史のポリティックス―人文主義とブリテン帝国』(風行社)において発表した。 また、当該年度ではとくに、ジェイムズの長子である皇太子ヘンリに着目し、ヘンリの家庭教師やベイコンなどに加え、劇作家のベン・ジョンソン、エンブレム・ブックの作者であるヘンリ・ピーチャム、歴史家のジョン・ヘイワード、海外事情の助言者であったロバート・ダーリントンなどを対象として、ヘンリの宮廷を舞台とする君主教育論の解明を試みた。 その結果、ジェイムズの『バシリコン・ドロン』に加え、ブリテンの伝説や騎士道の理念、そして人文主義的な教養に育まれた政治思想の再生産の過程が明らかとなった。また、それに併せて、各種の儀式や式典、仮面劇、エンブレム、アフォリズムといった、視覚的・言語的なアートが果たした役割についても新たに検討がなされた。 ヘンリをめぐる政治思想には、君主政を常態とする時代の言説とともに、ジェイムズからチャールズ1世へと至る、君主の再生を可能にする統治のアートが隠されていたと考えられる。この研究成果は次年度に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、コロナ禍のため、予定していた国内外での資料調査・収集ができず、研究の進捗に遅れが生じている。 また、皇太子ヘンリをめぐる政治思想の研究を進めるにあたり、ジョンソンやピーチャムといったヘンリの宮廷周辺の人物や、宮廷仮面劇やエンブレム・ブックといった、通常の政治思想史研究とは異なる作品にまで研究対象を広げる必要が生じたため、当該年度内に研究を終了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の終息を待って国内外での資料調査・収集を再開する。 また、皇太子ヘンリに関する研究成果を公開した後、彼の弟であるチャールズに対象を移し、君主教育や王位の継承、そして「王殺し」や「王政復古」に至る、17世紀におけるモナーキズムの展開を解明する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった洋書の発行が遅れ、入荷が間に合わなかったため。
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Research Products
(1 results)