2021 Fiscal Year Research-status Report
世界秩序構想としての「翻訳」の意義に関する政治社会学的研究
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19K01475
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
施 光恒 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70372753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 桂太 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (30335161)
佐藤 慶治 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 講師 (10811565)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポスト・グローバル化 / 翻訳 / 大衆文化 / 近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(2020年度)に引き続き、今年度(2021年度)もコロナ禍の影響のため、個人研究が中心となった。海外調査などは目途が立たなかった。まず個々人の研究についてであるが、研究代表者の施は、翻訳と近代社会の成立についてあらためて考察すると同時に、カール・ポパーの批判的合理主義において翻訳やナショナルな言語(国語)の成立や発展がどのように評価できるか検討した。柴山は、新自由主義に基づく現代のグローバリズムに対する批判、および伝統の意義についての考察を深めた。佐藤は、音楽社会学の観点から日本の戦後期における大衆文化の発展を「みんなのうた」などの海外の楽曲の翻訳との関係で論じた。 各メンバーの本研究に関わる業績は、学会報告1回、短いものも含むが論文計6本(うち査読あり0)、共著本の部分執筆1であった。 シンポジウムや研究会については以下のとおりである。5月には、本研究の分担者である佐藤慶治が代表を務める別の科研の研究(「NHK『みんなのうた』を中心とした日本児童音楽文化の変遷に関する歴史社会学的研究」(若手研究、課題番号18K13115))とともに、「国民文化としての1960年代「みんなのうた」」というシンポジウムを共催した。同シンポジウムでは、施や佐藤が政治経済学や音楽社会学の観点から、戦後日本の大衆文化と翻訳について論じた。また、12月5日に九州大学西新プラザにて研究会を開催し、メンバーの研究の進捗状況を報告し議論し合った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メンバーの個人研究に関しては、本年度も、コロナ禍で各々の大学での対処すべき事柄が増大したため若干低調であった。しかし、それなりの進展が見られた。伝統論、翻訳と大衆文化論、翻訳と自由民主主義社会の成立との関係について、各メンバーはそれぞれ研究を深めることができた。 だが、海外の研究者を招くなどを当初予定していたシンポジウムは開催の目途が立たなかった。その分、個人研究やオンラインを通じての研究会や打ち合わせが中心となった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況をにらみつつ、2021年度の比較的早い段階で当初の予定を延ばし、2022年度まで研究期間を延長することにした。 2022年度は、研究成果として、書籍(論文集)を完成させたい。現行の新自由主義に基づくグローバル化政策の破綻の実態やその思想的・哲学的原因、建設的なポスト・グローバル化の動きやその導きとなる理念と「翻訳」との関係性、翻訳と大衆文化の繁栄との連関などに関する書籍である。 また、コロナ禍の状況を2022年度もにらみつつではあるが、できれば研究成果を発表するシンポジウムをこれまで招いた研究者などとともに、開催したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた国内外の調査の目途が立たず、一年間延長させていただいた。2022年度は、研究成果をまとめる書籍の出版と、シンポジウムの開催を目標として活動に取り組む。書籍出版に向けての研究会や打ち合わせを福岡、京都、鹿児島でふた月に一度、行う。また、秋に福岡で研究成果報告のためのシンポジウムを予定している。人選はまだ確定していないが、これまでの研究会で講師として来ていただいた方々を中心にお招きする予定である。
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Research Products
(8 results)