2019 Fiscal Year Research-status Report
小規模町村の自律と重層的自治体間連携の実証研究:多元・協働型自治の可能性の検討
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19K01479
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
水谷 利亮 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00310897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小規模町村 / 自治体間連携 / 多元・協働型自治 / 集権・競争型自治 / 圏域自治 / 圏域行政 / 多核性 / 重層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は行政学と地方財政論などの知見から、人口減少社会において「地方創生」にみられる機能的合併の要素をもつ「集権・競争型自治」モデルに対し、小規模町村の自律・自治を維持・補完する観点から「多元・協働型自治」モデルを提示・対置し、水平・垂直連携を組み込んだ多核性がある重層的自治体間連携を含む「圏域自治」によるガバナンスのあり方を実証分析し、モデルの有効性を検討することが目的である。 2019年度は、①国の審議会での論点整理として、自治体戦略2040構想研究会と第32次地方制度調査会中間報告などにおける「圏域マネジメント」や「圏域行政」、「二層制の柔軟化」の考え方を批判的に分析するとともに、全国町村会の「『自律・分散』と『多様な連携協力関係』の構築」という考え方に多元・協働型自治モデルとの共通性を見いだした。②文献研究は、検討を進めている最中である。③長野県木曽地域と高知県嶺北地域などで人口5千人未満・高齢化率約50%の町村自治に焦点を当て、連携市町村や府県本庁・総合出先機関、広域連合などの担当部署でヒアリング調査・資料収集を行い、連携事業・計画・予算の政策立案・決定・実施・評価過程のあり方、圏域自治における行財政ガバナンス、府県による財政的・人的・専門技術的な市町村支援補完のあり方、連携の具体的成果と課題について調査を実施した。 暫定的知見として、新しい圏域行政の法制化などは町村自治を縮減する危険性があり、現行制度の広域連合や一部事務組合と定住自立圏などの活用による圏域自治の錬磨が小規模町村の自治の維持・活性化に有効だと考えられる。今後は国による広域連携促進の制度改革や財政誘導が強まることも予想されるが、小規模町村の持続可能性は、地方行政体制のあり方よりもむしろ、地方交付税充実など財源保障機能が重要なカギであるが、そのことが人口減少社会において最大のネックになるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「多元・協働型自治」の実践事例の調査・研究として、2019年度中頃までに長野県木曽地域と高知県嶺北地域の2エリアにおいて小規模町村と広域連携組織などのヒアリング調査と資料収集を実施できた。さらに年度末にも高知県中芸地域などにおける調査を計画・検討したが、コロナウイルス感染拡大によるリスク管理の観点から中止せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、5月現在でコロナウイルス感染拡大による全国的な緊急事態に直面しており、年度中の収束の見通しが不確実であり、リスク管理の観点から「多元・協働型自治」の実践事例の現地調査などは困難であることも予想される。今年度は、事例研究のための現地調査などは当面実施困難であるが、調査先の小規模町村の関係各課などに関係資料の提供などを依頼するとともに、調査先の条件が許せばオンラインでのヒアリング調査を検討してみたい。 2020年度は、自治体間連携に関する総務省第32次地方制度調査会における議論と最終答申を引き続き分析するとともに、都道府県・市町村などの行政現場での研究会・審議会の行政資料を収集・整理・分析し、具体的な論点・内容を整理・分析する。また、文献研究を中心に、行政学・地方財政論などでなされてきた広域連携論・自治体間連携(水平連携と垂直連携)論に関して、政策過程や行財政のあり方、「圏域自治」におけるガバナンスと民主的統制・住民自治の問題などについて国内外の論文・著書を引き続き読み込んで検討を続けたい。
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Causes of Carryover |
年度末3月中旬に予定してアポイントもとっていた宿泊をともなうヒアリング調査が、コロナウイルス感染症拡大により、リスクマネジメントの観点から中止せざるをえなくなり、その分の旅費の支出が行われなかったため。また、同様にコロナウイルス感染症拡大により大学の新たな業務が増大したために、図書費を含む物品費の支出も適切に行うことができなかったので、次年度使用額が生じた。
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