2022 Fiscal Year Research-status Report
小規模町村の自律と重層的自治体間連携の実証研究:多元・協働型自治の可能性の検討
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19K01479
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
水谷 利亮 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00310897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小規模町村 / 自治体間連携 / 多元・協働型自治 / 集権・競争型自治 / 圏域自治 / 圏域行政 / 介護保健福祉政策 / 広域連合 |
Outline of Annual Research Achievements |
現地調査と資料収集としては、前年度に引き続き「奈良モデル」において水道事業の広域化に関して奈良県庁と奈良市・大和郡山市・葛城市で、府県による市町村支援・補完の事例として「チーム愛媛」の愛媛県庁と砥部町・内子町、及び北海道庁と長万部町・函館市、介護保険・保健福祉政策における広域連合制度を活用している北海道空知中部広域連合及び高知県中芸広域連合と田野町・北川村・安田町、市町村の水平補完として長野県上田市と坂城町などで実施した。 暫定的知見として、水道事業の広域化などで府県と市町村の自治体間連携では、府県と関連市町村の丁寧な合意形成の確保と、構成自治体のそれぞれの住民への充分な説明責任を果たすことが必要条件であり、その条件が満たされていない限りは、個別自治体が連携・広域化の協議参加から一旦離脱する決定を行うことは、個々の自治体が自律(自立)を維持するためには必要である。 また、介護・保健福祉に関する政策領域は、市町村の基幹的な事務であるが、小規模町村ではその行政サービスを担う保健師や社会福祉士、栄養士などの専門職人材を充分に維持・確保することが困難になりつつあるなかで、小規模な5町村からなる高知県中芸地域では、中芸広域連合が介護保険の保険者と保健センターの機能を広域化した介護サービス課と保健福祉課の仕事を担っている。介護保険の保険者としての運営責任と能力の持続可能性を高めつつ、広域連合において地域包括支援センターを直営で運営することと、保健センターを広域化して広域連合に保健福祉課を設置することで、介護保険制度で分離・分断された介護保健福祉政策を広域連合において再統合し、構成町村の自律(自立)を維持しながら「福祉行政の主体としての責任」を広域連合が担おうとしていると考えられる。これは、小規模自治体の自律(自立)を支える「多元・協働型自治」モデルの事例の1つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「多元・協働型自治」の実践事例の調査・研究として、小規模町村と広域連携組織などの現地でのヒアリング調査については、コロナウイルス感染拡大によるリスク管理の観点から、調査のいくつかを2023年度に延期せざるを得なかったので、研究期間をさらに1年間延長した。ただ、2022年度において、2020年度から積み残していた現地調査として北海道、高知県、長野県、奈良県、愛媛県などで6回ぐらい実施できた。 他方で、文献研究を中心に、自治体間連携・「多元・協働型自治」に関する議論の整理・分析は漸進的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は本研究の1年延長した研究期間の最終年度であったが、約2年にわたって続くコロナウイルス感染の全国的な拡大があったために、さらに1年間の研究期間の延長を行い、2023年度において研究を完了する予定である。2023年4月現在でコロナウイルス感染症は収束しつつあるので、積み残している2ヵ所ぐらいの「多元・協働型自治」の実践事例の現地調査を実施する予定である。 それらの知見とこれまで実施してきた小規模自治体の自治の取り組みと自治体間連携の実態に関する知見を整理・分析しながら、まとめの考察を行いたい。また、文献研究を中心に、行政学・地方財政論などでなされてきた広域連携論・自治体間連携(水平連携と垂直連携)論に関して、政策過程や行財政のあり方、「圏域自治」におけるガバナンスと民主的統制・住民自治の問題などについて論文・著書を引き続き読んで、研究の総括を行いたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は研究期間の最終年度であったが、3年間にわたるコロナウイルス感染症の拡大により、リスクマネジメントの必要から当初から予定していて積み残していた現地でのヒアリング調査をすべて実施することができなかったために、旅費を中心に次年度使用額が生じた。 2023年度において1年間の研究期間の延長を行ったので、研究目的の達成のために必要な現地でのヒアリング調査を2ヵ所ぐらいで実施するために、残額を旅費を中心に使用する計画である。
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