2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01480
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
矢尾板 俊平 淑徳大学, コミュニティ政策学部, 教授 (10510951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地方創生戦略 / 地域経済の活性化 / 首長の評価 / 関係人口の創出 / 経験価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究計画に基づきWEBモニターを対象とする「地方創生施策の中間評価」に係るアンケート調査を実施した。WEBモニターは、全国20歳以上の男女2074名であり、その内訳は世代別人口の割合、地域別人口の割合も考慮し、サンプルを抽出した。調査結果は、以下の通りにまとめられる。 (1)自分が住んでいる地域の「地方創生戦略(まち・ひと・しごと創生総合戦略)への認識度は低く(10%以下)、施策の浸透度に課題がある。(2)2015年と現在の暮らしぶりの変化については、5年前から同じ地域に住んでいる回答者のみに限定すると、ポジティブな回答が64.3%、ネガティブな回答は35.7%と、おおむね5年前に比べ、暮らしぶりは良くなっている。(3)市町村の取り組みとして評価が低かったのは、中小企業への支援、行政改革・財政健全化、観光施策やプロモーション活動、中心市街地の活性化、公共交通網の整備・対策で、5割を下回った。地域経済の活性化という点で課題が残されていることが読み取れる。(4)首長の取り組みに関する評価については、最も多い評価で「60点~79点(38.7%)」、次に多い評価で「40点~59点(33.0%)」であった。一定の評価はしていることがわかる。(5)関係人口の観点からは、関係人口となり得る地域を持つ回答者の割合は、61.8%であった。その理由としては、「その地域で、何らかの「感動」を体験したことがあったこと(84.5%)」、「おいしいものが食べられたこと(83.9%)」、「その地域の特産品が魅力的であること(80.8%)」が8割を超えており、何らかの「経験価値」や特産品の魅力が地域の魅力となっていることが示唆された。 以上の結果から示唆されることは、5か年の地方創生施策を通じて、地域経済の活性化に課題が残されていることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地方創生の中間評価に係るWEB調査を実施し、その調査結果の分析については、計画通り進んでおり、順調である。2017年以降の首長選挙のデータベースの作成についても作業を進めている。一方、2020年春休み期間に計画していたヒアリング調査が、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、出張を自粛することにしたため、その点が2019年度の課題として残された。 また、地方創生の取り組みに関連して、公立病院の再統合に関するWEBモニター調査も実施した。この結果も、本研究の考察に組み込むことで、地方創生施策の中間評価をより多面的に行うことが可能になるとともに、有権者のニーズを確認することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年以降の首長選挙のデータベースを完成させ、2019年度に実施したWEBモニター調査結果を踏まえた地方創生施策への評価を取りまとめる。また、首長が交代した地域や2017年度以降に首長選挙が実施された大都市を対象としたWEBモニター調査を実施することにより、地方創生施策について精緻に分析を行う。さらに、2019年度に実施できなかったヒアリング調査については、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、出張が可能になった段階で、ヒアリング候補の自治体に依頼し、了承を得られた自治体から開始していきたい。なお、新型コロナウイルス感染症の今後の影響や拡大の可能性も念頭に置き、ヒアリング調査はできるだけ夏季期間に実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生している状況として、以下の点が理由として挙げられる。①首長選挙のデータベース作成を進めるにあたり、2019年度内においては、人件費が発生しなかったこと、②WEBモニター調査の実施について、委託先が割引を実施してくれたことにより、想定した金額以下で実施できたこと、③新型コロナウイルス感染症の影響により、出張を自粛したこと。 2020年度においては、首長選挙結果のデータベースを完成させ、地方創生施策の評価に向けた分析を実施するために、2019年度の人件費と2020年度に予定している人件費とを合算して集中的に研究作業を進めるとともに、WEBモニター調査の実施にあたり、昨年度の残額を加えることにより、モニター数や質問項目数を追加することができれば、それに充当することを計画する。さらに、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえながら、ヒアリング調査を行い、出張旅費を支出する。
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