2022 Fiscal Year Research-status Report
The Reconsideration on "Subjectivity" in Modern Political Theories through Care Ethics
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19K01484
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
杉本 竜也 日本大学, 法学部, 准教授 (30588900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ケアの倫理 / ケアのデモクラシー論 / トクヴィル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、ケアの倫理やケアのデモクラシーに関する研究だけでなく、トクヴィルをはじめとする近現代以降の西洋政治思想に関する研究を行い、前者の視点から後者の批判的考察を行った。現代においても、トクヴィルらによって体系化されたデモクラシー理論の有効性は失われていない。それはいわばデモクラシーにおける「正論」であり、これを否定した場合、モラル・ハザードが生じる恐れがある。一方で、トクヴィルらのデモクラシー理論は、市民像を限定的に理解して、結果的にある種の排除が発生している。そのため、トクヴィルらのデモクラシー理論を全体としては肯定しながらも、それを修正する必要性がある。それを可能にするのが「協働」という概念であり、「協働」を媒介として、トクヴィル型デモクラシー理論とケアのデモクラシー論を統合することを検討する必要がある。 トクヴィル型デモクラシー理論における「協働」は、市民による自治として現れる。対して、ケアの倫理やケアのデモクラシーにおける「協働」は、ケアという形で現れる。これらはいずれも、過剰に拡大している資本主義的価値観に対する警戒感に基づいており、この意識の共有によってこれらの統合が可能になる。 当該年度は、上記の研究内容をまとめ、「ケアの倫理に基づくトクヴィル型政治思想の再検討」『政経研究』第59巻第3・4号(2023年)という論文として明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画(研究費使用計画)は、書籍の購入とアメリカ政治学会(APSA)への参加費用を柱としていた。しかしながら、ここ数年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって海外渡航が不可能となり、研究の進捗に影響していた。当該年度は流行が沈静化し、カナダ・モントリオールで開催されたアメリカ政治学会に参加することができた。アメリカ政治学会ではジョアン・トロントをはじめとするケアの倫理の研究者と交流を持つことができ、トクヴィルに関する最新研究発表にも触れることができた。 その他、書籍の購入も計画的かつ適正に実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は研究完成年度になるため、研究全体を総括する内容の論文をまとめる予定である。 既に取り組んでいる論文はトクヴィルに関するものであり、本研究計画の片翼となる。これは同年度内に投稿する予定である。 研究内容を総括する論文は、この研究計画内で発表したすべての論文を総合する内容となる予定である。本研究計画は、ケアの倫理に基づいて近現代の政治思想が前提としてきた政治主体像を再検討することにある。そして、その批判的検討に基づいて、トクヴィルをはじめとする近現代のデモクラシー理論とケアのデモクラシー論の統合を目指す。この研究計画を実現するためには、より根底的に人間という存在に関する考察を深める必要があるため、狭義の政治学・政治思想にとどまることなく、幅広く西洋思想の研究の諸研究に当たっていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって研究計画の遅滞が発生したため、研究計画の完成年度を2023年度に延伸した。 2023年度は、従来通りの研究書籍の購入の他、国内学会(政治思想学会・社会思想史学会)への参加費用として研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)