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2020 Fiscal Year Research-status Report

The drug policy of Nazi Germany and "Greater East Asia Co-Prosperity Sphere"

Research Project

Project/Area Number 19K01502
Research InstitutionKyushu University

Principal Investigator

熊野 直樹  九州大学, 法学研究院, 教授 (50264007)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywordsナチス・ドイツ / 「大東亜共栄圏」 / 阿片 / 罌粟栽培 / 植民地朝鮮 / 朝鮮総督府 / 「満洲国」 / 蒙疆
Outline of Annual Research Achievements

当該年度において実施した研究の成果として、ナチス・ドイツが「満洲国」から輸入した阿片、すなわちナチ阿片と「大東亜共栄圏」との関係について、新たな史実を見出すことができたことを指摘できる。
第二次世界大戦中においてナチス・ドイツは、「満洲国」から輸入した阿片を日本軍政下の馬来や蘭印を始めとした南方占領地に輸出していた事実をこの間実証的に明らかにした。その際、ドイツは、当地から錫、ゴム、タングステンといった戦時の重要物資を輸入していたことを明らかにしている。そこで当該年度は、そこで使用されたナチ阿片の来歴についてさらに追究した。
ナチ阿片は、上述のように「満洲国」から輸入されたものであるが、実は「満洲国」は阿片の需要量に十分には応えられていなかった。そのため「満洲国」は阿片を蒙疆及び植民地朝鮮から戦時中に輸入していた。さらに、1943年に開催された大東亜阿片会議によって、「満洲国」と蒙疆は阿片の増産を割り当てられた。その結果、「満洲国」はさらに植民地朝鮮から阿片を輸入することになった。
そこで当該年度においては、植民地朝鮮における罌粟栽培と阿片生産の実態について検討を行った。その結果、当地においては罌粟栽培が朝鮮総督府の集団指導を通じて強制され、1941年では13道のうち5つの道で罌粟栽培がなされていたが、1943年には11の道で行われていたことが判明した。朝鮮総督府が要求した罌粟栽培とその面積の拡大は、凶作下の朝鮮農民に深刻な食糧不足をもたらした。しかもそこで生産された阿片の大半は、関東局や「満洲国」に分配された。「大東亜共栄圏」における日本の「大阿片政策」の実施にとって朝鮮産阿片は、必要不可欠なものであった。
「満洲国」に分配された朝鮮産阿片の一部は「大東亜共栄圏」やナチス・ドイツに再輸出され、重要な軍需物資の収買のために交換物資として利用されたと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

そもそもナチス・ドイツが「満洲国」から輸入した阿片の一部は、蒙疆から輸入されたものであることはこれまでの研究によって明らかにしてきた。しかし、「満洲国」が植民地朝鮮からも輸入していた事実とその内実は、これまで十分には明らかにされてこなかった。第二次世界大戦中の植民地朝鮮の罌粟栽培と阿片生産の実態を明らかにすることが、当該年度の主たる研究課題であった。
この間、朝鮮総督府関係の史料や厚生省の阿片協議会関係の史料を発掘することができた。それらの史料の分析から、第二次世界大戦期における朝鮮総督府による罌粟栽培の強制とその実態が明らかになった。とりわけ1943年に開催された大東亜阿片会議において「満洲国」は蒙疆と並んで「大東亜共栄圏」の阿片供給基地として位置付けられた。その「満洲国」に阿片を当時供給していたのが、朝鮮総督府であることがわかった。間接的に植民地朝鮮は、大戦中、「満洲国」を媒介に「大東亜共栄圏」の阿片供給基地としての役割を担わされていた。この時期、「満洲国」はナチス・ドイツに阿片を大量に供給していたが、その阿片の一部が朝鮮産であった可能性は否定できない。このように、ナチ阿片と「大東亜共栄圏」との関係において、朝鮮産阿片を位置付けた点が当該年度の研究の大きな成果であるといえる。
以上から、現在までの研究の進捗状況は、(2)の「おおむね順調に進展している」という評価に至った。

Strategy for Future Research Activity

上記のように、当該年度の研究は「おおむね順調に進展している」という評価に至ったが、依然として課題もまた残されている。
今後の研究の推進方策は、上記の課題を踏まえて、従来の課題であるナチス・ドイツが馬来や蘭印を始めとした南方占領地域を中心とした「大東亜共栄圏」において阿片と錫、ゴム、タングステンといった戦時重要物資をバーター取引していたという決定的な一次史料を発掘することである。この間、日本の南方軍政に関する新たな史料集を購入して、解読を進めているが、現段階においては発掘できていない。引き続き上記の課題に取り組む予定である。
これまで主に阿片やコカ、さらに今年度は罌粟栽培に注目して研究を行ってきたが、ナチス・ドイツは、覚せい剤の原料である麻黄を蒙疆を中心とした東アジアから日本を仲介として輸入していた事実を把握している。今後はこの麻黄をめぐるナチス・ドイツと「大東亜共栄圏」との関係を中心に検討していく予定である。
ナチス・ドイツにおいて覚せい剤は、戦争遂行のために積極的に導入され、前線の兵士に大量に配布されていたことが、ドイツ側の研究で詳細に明らかにされている。ナチス・ドイツの麻薬政策は、阿片やモルヒネと並んで覚せい剤の使用をめぐる問題でもあった。1941年6月にナチス・ドイツは覚せい剤を阿片法の取り締まり対象に加えたが、実際には前線において依然として大量に覚せい剤が使用されていた。ナチイデオロギーと戦争遂行との齟齬が集約的に覚せい剤をめぐる政策に表れている。今後、このナチス・ドイツの覚せい剤政策をめぐる相克の実態を明らかにする必要がある。
以上が、今後の研究の推進方策である。

Causes of Carryover

今年度は、新型コロナ感染症拡大に伴う国内外の出張の自粛のため、当初予定していた国内外の文書館等の史料調査・収集が全くできなかった。そのため、旅費を一切使用することができなかった。そのため次年度使用額が大幅に生じてしまった。
次年度は、状況を見て国内外での史料調査・収集が可能になれば、旅費として使用する計画である。それが難しい場合は、当該関係史料を購入する計画である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 近代日本の阿片政策と「植民地朝鮮」2020

    • Author(s)
      熊野直樹
    • Journal Title

      法政研究

      Volume: 87巻 Pages: 649‐673

    • Open Access
  • [Presentation] 合評会「熊野直樹『麻薬の世紀』(東京大学出版会、2020年)をめぐって」リプライ2021

    • Author(s)
      熊野直樹
    • Organizer
      西日本ドイツ現代史学会
  • [Presentation] シンポジウムⅠ「ドイツ外交史研究の最前線『歴史のなかのドイツ外交』を手掛かりに」コメント2020

    • Author(s)
      熊野直樹
    • Organizer
      ドイツ現代史学会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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