2022 Fiscal Year Research-status Report
安全保障政策の変更をめぐる諸国家の戦略的相互作用に関するゲーム理論的考察
Project/Area Number |
19K01504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩波 由香里 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40635447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 安全保障 / 抑止 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は、①同盟に関する研究と②国防政策(軍事費の増減、一般抑止)の二つのプロジェクトから成り立つ。 ①の同盟に関する研究では、同盟を構成する国の間の軍事力の負担分担に注目し、同盟の負担分担がもたらし得る抑止の効果と抑制の効果が発生する条件をゲーム理論を用いて示し、戦後の日米同盟を用いて二つの効果を例証した。モデルからは、この二つの効果は、異なる条件下で発生するため、同時に発生することはなく、軍事費のコストがあまり高くない場合には抑制の効果、コストが高い場合には抑止の効果が期待されることが判明した。また、軍事費のコストが高くも低くもない場合には、同盟なしでも現状が維持されるため、同盟が形成されないことも判明した。また、超大国は弱い同盟国よりも多くの軍事負担を引き受けることがあるが、同盟国のただ乗りを許すというよりは、同盟国が軍事大国になるのを防ぐためや、弱い同盟国が自国の軍事力を強化して抑止を図る動機をもつよう軍事負担を行うことが分かった。
②の国防政策に関する研究では、抑止の成功と失敗により明らかになる指導者の能力と国家が置かれた状況に関する情報の開示の非対称性に注目し、ポリティカル・エージェント・モデルを用いて、国防政策の透明性と指導者の評判への関心が、国防政策にどのような影響を与え、一般抑止の成功と失敗へとつながり、そして市民の利得に影響を与えるのかを分析した。分析により、国防政策の透明性の欠如は軍備拡大を引き起こすことがあるが、政策の透明性を確保しても、市民にとってより望ましい政策が採択されるとは限らないことも明らかになった。また、一般抑止は、指導者の迎合行為の他にも、ポスチュアリング(有能なふりをする)の動機によっても失敗する可能性があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
同盟の論文の方は、海外の査読誌にアクセプトされ、online firstで公刊された。国防政策の論文の方は、海外の雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
二本の論文自体は完成をしている。しかし、雑誌に掲載されるためには、査読者やエディターの意見を取り入れた上で、修正を行う必要がでてくる場合もある。国防政策の論文については、エディターや査読者からのコメントに基づき、修正を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
一本の論文がまだ査読中であり、査読者のコメントにそって論文を修正する必要がある。その修正に必要な書籍などを購入する資金が必要である。大幅な修正が必要でない場合には、オープンアクセスの費用として用いる。
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