2023 Fiscal Year Research-status Report
Economic interdependence and threat perception
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19K01511
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
植木 千可子 (川勝千可子) 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (50460043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際関係 / 脅威認識 / 安全保障 / 経済相互依存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済アクター及び経済的要因が安全保障上の脅威認識の形成に与える影響を明 らかにすることを目指している。これまで脅威認識の研究は、主に外交・安全保障アクターが安全保障の認識 を中心に分析されてきた。その際、もっぱら分析の対象となったのは、安全保障に関係の深い軍事能力や出来事であった。経済相互依存関係が脅威認識に影響を与えることは推測されてはきたが、経済アクターが脅威認識の形成に与える影響を分析した研究は少ない。本研究では、経済アクターの役割に着目しながら、 経済が外交・安全保障に与える影響を検討する。 2023年度は、前年度に引き続いて、既存の脅威認識に関する研究と経済依存と戦争の研究を調査し、経済アクターの脅威認識に影響を及ぼし得る要因・条件の整理を行った。安全保障アクターが経済的要因をどのように分析し脅威認識の形成するかについても検討した。新型コロナ感染の影響で予定していた聞き取り調査が十分に実施できなかったが、23年度は、一定程度、実施可能だった。 これまでの調査の結果では、国によって安全保障議論と経済問題の関連(リンケージ)は差異が認められた。対中脅威認識については、米国においては、経済界の経済的な利益の有無、多寡が安全保障議論に影響を与えていた。それに比べて、日本においては、安全保障議論と併行して存在している場合がより多く観察された。 日米ともに、脅威認識に関して経済アクターから安全保障アクターへの影響は比較的少なかった。経済アクターの脅威認識は、安全保障アクターらの認識の影響が強くみられた。変化として認められたのは、経済活動のために良好な2国間関係を希望していた経済アクターからの影響が弱くなったことによって、安全保障アクターらの脅威認識が政府の政策に反映されやすくなったことだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の世界的な感染拡大によって、海外における聞き取り調査、調査・研究を計画・予定していたが、多くを取り止めなくてはならなかった。国内における 聞き取り調査も実施が困難であり、進捗が遅れた。初対面の経済アクターを対面でなくオンラインでインタビューするのは社会慣習上、容易ではないため、進捗に影響が出た。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、安全保障アクターの経済的な要因・状況についての認識についてもデータを収集する予定である。各アクターが他国との関係を評価する際に、どのような要素に着目するのか、などを明らかにすることを目指す。また、安全保障アクターと経済アクターの認識を時系列で追うことによって、それぞれが影響を与える過程とメカニズムを調査・分析することを計画している。2020年頃からの経済安全保障の議論についても考察を進める。各国が、自律性の向上、優位性、不可欠性の確保を目指して、経済安全保障を進めているが、これらが経済的な要請からなのか、安全保障からなのかについても考察する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの世界的流行が起こったため、多くの研究会、学会、国内・海外における聞き取り調査、資料収集を取りやめなくてはならなかった。とくに中国における聞き取り調査は実施できなかった。次年度は日本国内における聞き取り調査を実施するほか、データの分析を完成させる計画である。
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