2019 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦後の社会科学研究評議会(SSRC)の活動と学際的知の形成
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19K01513
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐々木 豊 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (00278748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 啓雄 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (30294169)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 米国社会科学研究評議会 / 比較政治学研究 / 国家安全保障研究 / 政治的近代化論 / 経済成長と安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は第二次世界大戦後に米国社会科学研究評議会(SSRC)内に創設された社会科学の各分野の研究促進を目的に創設された4つの委員会(「比較政治委員会」、「経済成長と安定委員会」、「政治行動委員会」、「国家安全保障研究委員会」)の活動をロックフェラー・アーカイブ・センター(RAC)に所蔵されている一次史資料の分析を通じて①これらの委員会の研究活動によって構築された社会科学的学知の具体的成果とその学際的性格②SSRCと主要財団の連携協力の制度的基盤、を明らかにすることにある。 その目的で研究代表者(佐々木)は昨年度夏季休業中にRACを訪問し、「比較政治委員会」、「経済成長と安定委員会」の活動に関わる一次史資料を閲覧・収集した。(「国家安全保障研究委員会」関係の資料も一部収集。)その結果、特に「比較政治委員会」による政治的近代化論構築の際の学問的動機と政策科学としての社会科学研究確立の動機の融合の経緯を検証する上で十分な資料を入手することができた。「政治行動委員会」及び「国家安全保障研究委員会」の活動の分析を担当する研究分担者(中嶋)は、RACが閉鎖されたため昨年度3月に予定していた訪問を中止せざるを得なかった。そのような事情もあり、研究代表者は「国家安全保障研究委員会」関係の資料を研究分担者と共有した。 また研究計画に基づいて研究代表者と研究分担者は昨年度12月及び3月に打ち合わせを行う機会を持ち、必要な文献・資料の収集状況に関して詳しい情報交換を行った。同時に4つの委員会の活動を分析する際の共通視座、つまり社会科学的学知の構築に当たって①客観的な学術モデルの確立を狙った学問的動機と政策決定機関による公共政策に資する学知の提供、という二つの動機の折り合わされ方②社会科学的学知の生産体制(財団を含む)に当たってのネットワーク構築を含む各委員会のエトスの析出、を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
戦後アメリカにおける社会科学的学知の生産体制を総合的に分析することを課題におく本研究の遂行に当たっては、米国社会科学研究評議会によって設立された各委員会の一次資料の収集が不可欠であり、1~2年目は海外調査が主な作業となる。“やや遅れている”理由としては、既述のように、研究代表者(佐々木)は、昨年度夏にロックフェラー・アーカイブ・センターにおける資料収集を行った一方、研究分担者(中嶋)は、本年3月の同センターにおける資料収集を計画していたものの、新型コロナウィルス感染症の蔓延によって、同センターが海外からの研究者の受け入れを中止し、計画変更を余儀なくされたことが挙げられる。そのため、米国社会科学研究評議会の各委員会の一次史資料(特に「政治行動委員会」・「国家安全保障研究委員会」の活動関係の一次史資料)の収集という観点からは、現状では遅れを取っていると言わざるを得ない。今後の課題としては、資料閲覧・収集の遅れを挽回するためにもこれまで収集した資料を共有することを通じて、本研究課題の達成を念頭においたより緊密な共同作業体制を確立しておくことにあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、一年目同様、研究代表者、研究分担者とも、ロックフェラー・アーカイブ・センターにおける現地資料収集を実施することが当面の目標・課題である。それを目指して、現在、予備的な日程調整を行っている。文書館の閉鎖の継続等の理由により今年度の夏の調査が無理な場合は、来年の3月に春休み(場合によっては、来年度の夏休み)を使って、再度、同センターを訪れ、残りの必要資料の収集に当たる予定である。特に本年度の資料収集に当たっては、やはりロックフェラー・アーカイブ・センターに所蔵されているフォード財団による助成活動関連の資料を閲覧・入手することを通じて、戦後米国における社会科学的学知の生産体制の制度的基盤およびこれらの団体に集った政治学者を含む社会科学研究者の社会科学観を実証的に明らかにすることを焦点の一つとしたい。 また、これまでの海外資料調査の結果を踏まえ、本年度は秋以降に研究会(関西アメリカ史研究会等を予定)の場で研究成果の中間報告的発表を行うことを予定している。また3年目(最終年度)に予定している学会(日本アメリカ史学会等を予定)における研究の最終成果の発表に向けて、準備作業に着手する予定である。また、論文(英文)刊行という形での研究成果発信の作業も行う。その目的で、本年度は今後少なくとも3回の打ち合わせを含む会合(8月、12月、3月を予定)を持ち、研究代表者・研究分担者によるこれまでの研究成果に関する情報交換及びたたき台としてのモデル報告を行い、研究の明確化と深化を図っていく所存である。またその際、外部コメンテーター(比較政治学や経済史の専門家)を招いてフィードバックを得ることも想定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は、本研究の研究分担者が昨年度春季休業中に予定していた海外調査(米国ロックフェラー・アーカイブ・センターへの史資料閲覧・収集調査)が、同センターが新型コロナウィルス感染症蔓延の事情により閉鎖されたため、訪問中止を余儀なくされたことにある。当該助成金は、本年度に予定している外国旅費(海外調査)費用の補いとして使用する計画である。
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