2020 Fiscal Year Research-status Report
ウッドロー・ウィルソンの「14ヵ条」の平和原則に関する基礎的研究
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19K01514
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高原 秀介 京都産業大学, 国際関係学部, 教授 (40440870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ外交史 / ウッドロー・ウィルソン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度以降、ウィルソンの外交、とりわけ「14ヵ条」の研究について研究を進めてきている。本研究開始後、2年目にあたる令和2年度は、(1)本務校・所属先新学部での担当授業の増担といった職場環境の変化などもあり、その授業準備作業に追われたこと、(2)新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、米国や英国などでの海外資料調査の実施が引き続き困難となり、新史料の発掘が不可能となったことにより、論文掲載などを通じた具体的な研究成果を残すことができなかった。この点について、誠に忸怩たる思いを禁じ得ない。その一方で、かつて入手した一次史料の整理・精読を通じ、これまで気付かなかった歴史事象の相互関係や意外な人脈関係など、新たな知見が得られたことを申し述べておきたい。ウィルソン研究において、The Papers of Woodrow Wilson(全69巻)が最も重要な公刊史料であることは多言を要しないが、ウィルソン政権に関与した政策決定者の私文書なども研究を遂行するうえで大変有用である。これらの一次史料の分析を進める過程で、ウィルソン外交の新たな側面も知ることができ、今後の研究に活かしたいと考えている。前年度には、100年前と現在のアメリカの比較検討への関心から、ウィルソン時代とトランプ時代のアメリカにおける公と私をモチーフに、最近の第一次世界大戦やウィルソン研究の動向にも触れつつ論考をまとめた。2021年1月のバイデン民主党新政権発足に伴い、「同盟国重視」を掲げたアメリカによる国際主義復帰の具体的態様に注目が集まりつつある。このようなアメリカによる対外関与方針の変容を踏まえながら、令和3年度には研究成果をまとめ、「14ヵ条」をめぐるウィルソン政権の外交の内実に迫ることができるよう、引き続き研究を進めていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述した背景理由など、不可抗力の要素はあるものの、令和2年度は一次史料の解読・精査を優先した結果、論文等の具体的な研究成果をまとめることができなかったことは、大変遺憾に思う次第である。2019~2020年の冬に始まった新型コロナウィルスの感染拡大に伴う悪影響により、引き続き研究の遂行に支障が生じていることを申し述べておきたい。当初、初年度から米国などでの史料調査を計画していたものの、各国での国境封鎖により、海外渡航が困難な状況となった。次年度となった令和2年度も、海外での資料調査を実施できなかった。今後いつ頃海外渡航が可能となるのか、引き続き事態の推移を見守るしか術はない。入手済の一次史料や研究書を読み解く中で、研究成果につながる手がかりが得られつつあり、その一筋の光明に望みを託したい。一方、研究のための体制は、新たなコンピューター環境の構築等により、格段に改善された。研究環境の改善によって、研究の遂行がいっそう容易になりつつあり、大変ありがたく感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、国内外において、様々なプロジェクトに取り組みつつあり、一部についてはすでに成果の目処が立ちつつある。これまで研究代表者は、ウィルソン政権の外交に関する個別研究を四半世紀以上に亘り積み重ねてきた。その経験を通じて、はじめて理解可能となった点も少なくない。これまでの研究蓄積を活かしながら、着実な個別研究への取り組みを通じて、執筆を進めつつある単著の上梓につなげられるよう、引き続き当該研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
令和2年度も、米国などでの史料調査を計画していたものの、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界各地での国境封鎖のために海外渡航が困難となり、旅費等の執行が不可能な状況となったため、次年度使用額が生じた。令和3年度は、状況の推移を見守りつつ、ワクチン接種を経た後、前年度に実現できなかった海外での史料調査を実施すべく、夏期休暇もしくは春期休暇を軸に、具体的計画を検討していきたいと考えている。
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