2021 Fiscal Year Research-status Report
ウッドロー・ウィルソンの「14ヵ条」の平和原則に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K01514
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高原 秀介 京都産業大学, 国際関係学部, 教授 (40440870)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アメリカ外交史 / ウッドロー・ウィルソン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度以降、ウィルソンの外交、とりわけ「14ヵ条」の平和原則について研究を進めてきている。3年目にあたる令和3年度は、引き続き新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外資料調査の実施が引き続き困難となり、非常に厳しい研究環境下での取り組みとならざるを得なかった。それでもなお、専門学術誌への論文掲載や国際共同研究などを通じた具体的な研究成果を残せたことは誠に幸いであった。本年度の研究成果としては、(1)ハーバート・C・フーバー研究に関する書評論文をまとめ、その執筆過程において、ウィルソン政権期から冷戦期に至る米国政治史を改めて鳥瞰できたことは大きな収穫であった。さらに、(2)ウィルソン政権の対ロシア出兵政策に関する英文論文を論文集の所収論文として発表した。本稿は、2014年6月にモスクワのロシア国立研究大学高等経済学院で「第一次世界大戦におけるロシア」をテーマとして開催された、大規模な国際共同研究プロジェクト(RGWAR)での学会報告の内容を改稿したものである。ウィルソン政権が、米国の北ロシア出兵やシベリア出兵をグローバルな視点で捉えつつ、「14ヵ条」の理想と国際政治の現実を踏まえながら政策決定を進めた背景が、一層明らかとなった。また、本課題研究に関する令和2年度の研究成果において、研究遂行者は100年前の米露関係に歴史的視点から着目しつつ、安全保障を巡る両国関係の難しさと危険性を指摘した。奇しくも2022年2月のロシアによるウクライナ侵略によってそれが現実のものとなってしまったことは、大変衝撃的であった。このような国際環境の激変に対処しつつ、アメリカがいかなる国際主義復帰の具体的態様を描きつつあるのか、引き続き注意を払いながら、本研究課題の研究成果をまとめ、「14ヵ条」をめぐるウィルソン政権の外交の内実に迫ることができるよう、引き続き研究を進めていく所存である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は専門学術誌への論文掲載や国際共同研究などを通じた具体的な研究成果を残せた。その一方で、不可抗力の要素はあるものの、2019~2020年の冬に始まった新型コロナウィルスの感染拡大に伴う悪影響により、引き続き研究の遂行に支障が生じていることを申し述べておきたい。当初、初年度から米国などでの史料調査を計画していたものの、各国での入国規制等により、海外渡航が困難な状況となった。次年度となった令和2年度と本年度(令和3年度)も、海外での資料調査を実施できなかった。次年度以降、海外渡航が可能となり従来と同様に一次史料の収集等が可能となるのか、事態の推移を見守るしか術はない。ひきつづき、入手済の一次史料や研究書を読み解く中で、研究成果につながる手がかりが得られつつあり、その一筋の光明に望みを託したい。なお、研究のための体制は、新たなコンピューター環境の構築等により、格段に改善された。研究環境の改善によって、研究の遂行がいっそう容易になりつつあり、大変ありがたく感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、国内外において、様々なプロジェクトに取り組みつつあり、一部についてはすでに成果の目処が立ちつつある。これまで研究代表者は、ウィルソン政権の外交に関する個別研究を四半世紀以上に亘り積み重ねてきた。その経験を通じて、はじめて理解可能となった点も少なくない。本研究課題の最終年度に向けて、これまでの研究蓄積を活かしながら、着実な個別研究への取り組みを通じ、執筆を進めつつある単著の上梓につなげられるよう、引き続き当該研究を推進していきたい。
|
Causes of Carryover |
令和3年度も、米国等での資料調査を計画していたものの、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界各地での入国制限等のために海外渡航が困難となり、旅費等の執行が不可能な状況となったため、次年度使用額が生じた。令和4年度は、状況の推移を見守りつつ、ワクチン接種を経た後、前年度に実現できなかった海外での資料調査を実施すべく、夏期休暇もしくは春期休暇を軸に、具体的計画を検討していきたいと考えている。
|