2022 Fiscal Year Research-status Report
ウッドロー・ウィルソンの「14ヵ条」の平和原則に関する基礎的研究
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19K01514
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高原 秀介 京都産業大学, 国際関係学部, 教授 (40440870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ外交史 / ウッドロー・ウィルソン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度以降、ウィルソンの外交、とりわけ「14ヵ条」の平和原則について研究を進めてきている。4年目にあたる令和4年度は、引き続き新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外資料調査の実施が引き続き困難となり、非常に厳しい研究環境下での取り組みとならざるを得なかった。加えて、想定外の個人的事情も加わり、専門学術誌への論文や書評の掲載機会が複数あったものの、残念ながら辞退せざるを得ない状況に追い込まれた。本年度の研究成果としては、ウィルソン主義の態様に関する論考をまとめた。拙稿では、ウィルソン外交の特徴について何点か指摘しつつ、その執筆過程において、ウィルソン外交が第一次世界大戦終結前後の国際社会に与えた影響と現代アメリカ外交におけるその意味について、改めて検討する機会が得られたことは大きな収穫であった。その他、ウィルソン文書集(Papers of Woodrow Wilson)やウィルソン政権の外交政策に関わる政策決定者の個人文書などの一次史料を分析する作業を進めることができた。なお、本課題研究に関する研究成果において、以前、研究遂行者は100年前の米露関係に歴史的視点から着目しつつ、安全保障を巡る米露関係の難しさと危険性を指摘した。だが、ウクライナ戦争終結の兆しは未だ見いだせない。ロシアによるウクライナ侵略を端緒とした国際環境の激変に対処しつつ、バイデン政権のアメリカがいかなる国際主義復帰の具体的態様を描きつつあるのか、あらためて注意を払いながら、本研究課題の研究成果をまとめ、「14ヵ条」をめぐるウィルソン政権の外交の内実に迫ることができるよう、引き続き研究を進めていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4年度は、ウィルソン外交に関する論考をまとめることができた。その一方で、2019~2020年の冬に始まった新型コロナウィルスの感染拡大に伴う悪影響により、引き続き研究の遂行に支障が生じていることを申し述べておきたい。当初、初年度から米国などでの史料調査を計画していたものの、各国での入国規制等により、海外渡航が困難な状況となった。次年度となった令和2年度から本年度(令和4年度)までも、海外での資料調査を実施できなかった。令和5年度以降、海外渡航が可能となり従来と同様に一次史料の収集等が可能となると思われる。したがって、事態の推移を見守りながら、資料調査を計画したいと考えている。それまでは、ひきつづき入手済の一次史料や研究書を読み解く中で、研究成果につながる手がかりが得られるよう努力したい。なお、研究のための体制は、新たなコンピューター環境の構築等により、格段に改善された。研究環境の改善によって、研究の遂行がいっそう容易になりつつあり、感謝に堪えない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ウィルソン政権の外交に関する様々なプロジェクトに取り組みつつあり、一部については成果の目処が立ちつつある。その一方で、なお調査が必要な部分もあり、包括的な研究成果を発表するには、なお慎重を要するものと考えている。これまで研究代表者は、ウィルソン政権の外交に関する個別研究を四半世紀以上に亘り積み重ねてきた。その経験を通じて、はじめて理解可能となった点も少なくない。本研究課題の最終年度に向けて、 これまでの研究蓄積を活かしながら、着実な個別研究への取り組みを通じ、執筆を進めつつある単著の上梓につなげられるよう、引き続き当該研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度も、米国等での資料調査を計画していたものの、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界各地での入国制限等のために海外渡航が困難となり、旅費等の執行が不可能な状況となったため、次年度使用額が生じた。令和5年度は、個人的事情を勘案するとともに状況の推移を見守りつつ、ワクチン接種を経た後、前年度に実現できなかった資料調査を実施したい。まずは国内での調査から開始できるよう、夏期休暇もしくは春期休暇を軸に、具体的計画を検討していきたいと考えている。
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