2022 Fiscal Year Research-status Report
日本本土における米軍基地問題の史的展開―「危険性」の変容と「同盟」強化
Project/Area Number |
19K01515
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉次 公介 立命館大学, 法学部, 教授 (40331178)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 米軍基地問題 / 田中角栄内閣 / 飛鳥田一雄横浜市長 / 戦車輸送阻止事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、研究計画の見直しを行いつつ、田中角栄政権期の米軍基地問題についての資料調査および資料の読解を実施した。 また、立命館大学で開催された政治学研究会(2022年7月28日)において、「田中角栄政権と米軍基地問題」と題する研究報告を行った。そこでは、田中政権期に日本本土における米軍基地の「危険性」が低減する一方、田中政権が米軍基地の運用という点では「対米配慮」を優先させていたことなどを指摘した。 2022年度における最も重要な進展は、これまでの資料調査や、研究会等での他の研究者との意見交換などを踏まえて、1972年に飛鳥田一雄横浜市長が、相模補給廠から横浜のノースピアに向かう米軍戦車の輸送を、車両制限令を盾にとり、横浜市の権限を活用して阻止した、いわゆる「戦車輸送拒否事件」に焦点を当てた論文の執筆に着手したことである。その論文は、実証研究が進んでいない、戦車輸送拒否事件における飛鳥田市長の思想と行動を明らかにし、米軍基地問題史における同事件の意義を検討することをめざすものである。 戦車輸送拒否事件における飛鳥田の思想と行動を明らかにするために、まず、同事件に関する朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の記事や、『世界』など当時の雑誌の記事を網羅的に収集した。この作業で、戦車輸送拒否事件の事実経過や、飛鳥田の当時の発言および行動を把握することができた。さらに、『飛鳥田一雄回顧録』(朝日新聞社、1987年)や、飛鳥田の側近であった鳴海正泰の『自治体改革のあゆみ』(公人社、2003年)など、当事者の回想も収集し、分析を行った。それによって、当時の飛鳥田の言動の背景にある、彼の思想を浮かび上がらせることが可能となった。 なお、資料の収集・整理では、アルバイトを雇用し、作業の効率化をはかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究事業においては、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、調査のための出張をできるだけ控える形で、研究を進めざるをえなかった。そのため、当初、予定していたような資料調査を行うことができず、課題の設定や資料調査などの面で研究計画の見直しを行う必要があった。以上の理由により、研究の進捗状況は、当初の予定よりもやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、飛鳥田一雄横浜市長だけでなく、戦車輸送阻止事件に関する日本政府・与党の行動、アメリカ政府の対応、飛鳥田が所属していた野党・社会党、そして相模補給廠を抱える相模原市、神奈川県の動向も視野に入れて、戦車輸送拒否事件の政治過程全体を明らかにする方向で作業を進めたい。それにより、日米関係史における戦車輸送阻止事件の意義を考察したいと考えている。 当時の新聞、雑誌はもとより、日米両政府の外交文書や、相模原市の史料、国会議事録の分析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、調査のための出張を控えたことである。また、防衛省に情報公開請求を行っているが、文書の開示が進まず、複写の機会がないことなども、次年度使用額が生じた一因である。 2023年度においては、新型コロナウィルスの感染拡大防止への配慮が不要となれば、調査のための出張を実施する予定である。また、防衛省による情報公開も進み、複写の機会があるのではないかと思われる。その他、日米両政府の外交文書などの資料収集や、資料収集・整理のためのアルバイトの雇用などにも、科学研究費補助金を活用する予定である。
|
Research Products
(1 results)