2019 Fiscal Year Research-status Report
Subnational Conflicts and Transitional Justice: Secessionist Movements in Asia
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19K01516
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
クロス 京子 京都産業大学, 国際関係学部, 准教授 (40734645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 東ティモール / CNC / サブナショナル紛争 / 補償・賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア諸国家において観察される、周辺地域(サブナショナル)支配をめぐる長期に及ぶ少数派による分離独立闘争に着目し、サブナショナル紛争において採用される移行期正義の特徴とその採用背景を分析するものである。移行期正義とは、国家や社会が真実や正義、償い、和解を通して、過去の大規模な人権侵害を清算するために実施する司法・非司法の手段であり正義の概念である。本研究は、国際的に規範化・制度化が進む移行期正義概念がいかにアジア諸国に受容されているのかをサブナショナル紛争における移行期正義の実施状況を分析することで明らかにするものである。 本研究では、東ティモール、アチェ、スリランカ、ミンダナオ、ミャンマー、南部タイの六つの事例における紛争中、紛争後の移行期正義の実践を取り上げる。研究初年度の2019年度は東ティモールで現地調査を行った。当地では、2009年の住民投票から10年を迎え、移行期正義の残された課題が取り組まれている。 現地調査では、2005年と2008年に活動を終えた2つの真実委員会の勧告を実施する恒久的委員会「チェガ国家センター”Centro Nacional Chega!”」を訪れ、その設置背景と活動状況についての聞き取りを行った。聞き取りでは、刑事裁判や真実委員会、制度改革などの活動の中で特定の被害者が排除されたこと、とりわけ独立派による暴力の被害者や性的暴力被害者など、不都合な「真実」を体現する被害者を救済する目的で被害者支援を行うことになった背景が明らかになった。本現地調査の成果は、東ティモールの20年に及ぶ移行期正義の国内へのインパクトを分析する論文にまとめ、2020年度にAsian Journal of Peacebuildingから公刊する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、当初の計画では、アジア地域のローカルな人権団体を支援するNGO「アジアの正義と権利(AJR: Asia Justice and Rights)」で聞き取り調査を行う予定であったが、都合がつかず実施できなかった。 他の地域については、フィリピンの移行期正義について研究発表を行う機会に恵まれたたために、二次文献による調査研究が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響がどこまで続くのか分からず、6月に予定されていた国際学会での報告が延期されるなど、現地調査・学会報告の予定が立てづらい現状である。可能であれば、スリランカに渡航・現地調査を行う予定であるが、情勢を見極めたい。渡航が難しい場合でも、二次文献と入手可能な一次文献の収集に努め、紛争の概要と移行期正義の実施状況の整理を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの発生により当初予定していた国内出張がキャンセルになったため。2020年度に国内出張費に充てる計画である。
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Research Products
(4 results)