2020 Fiscal Year Research-status Report
科学技術イノベーションの遍在化が国家安全保障に与える影響-米国を事例として-
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19K01518
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
松村 博行 岡山理科大学, 経営学部, 准教授 (60469096)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国防イノベーション / イノベーション・エコシステム / エコノミック・ステイトクラフト / 米中大国間競争 / デカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は事例研究と理論研究を進めた。まず,事例研究として,昨年度に引き続き米中の大国間競争下における「技術覇権」 を巡る動きに注目した。ここでは,米国が進める科学技術領域の「脱中国化(デカップリング)」の政策手段の分析を行った。それと同時に,なぜ米国が科学技術において中国依存を深めたのか,その歴史的経緯のフォローも行った。この成果の一部は,10月の日本国際政治学会研究大会において発表した(論題:「外国人STEM人材受け入れをめぐる政策決定-トランプ政権を事例に-」)。また,この発表内容を加筆修正したものを2021年度中に出版される『米中経済摩擦の政治経済学』に所収されることが決まっており,既に校了済みである。 次に,米国の中国を対象とした科学技術領域における種々の制裁を分析する視角としてエコノミック・ステイトクラフト論が適していると思われたので,そのレビューを行った。れは,当初の研究計画にはなかったものであるが,その成果の一部を10月の日本国際経済学会全国大会において発表した(論題:「米中経済摩擦とエコノミック・ステイトクラフト」)。また,この発表内容を基に加筆修正した論文を学会誌に投稿しており,現在査読中である。 研究成果の対外発表は概ね予定通り進められたが,当初予定していた資料収集やインタビューを目的とした渡米が新型コロナウイルスの世界的蔓延に伴い実施することができなかった。そのため,イノベーションに係るアクターの調査が全く進んでおらず,これについては予定を大幅に見直すか,あるいは研究期間の1年延長を申請するかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究のレビューや,文献調査で実施可能な範囲の研究は予定通り進められており,またエコノミック・ステイトクラフト論など,当初の予定になかった範囲にも手を広げられている。対外発表も学会報告については予定通りのペースで進められており,今年度には公刊にまで至らなかったが,すでに原稿化,提出を終えている論文も何本かある。 ただし,Covid-19の影響により,渡米調査の機会をもつことができなかったため,予定していた資料調査およびインタビュー調査がまったくできなかった。それにより,研究計画の一部において遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は最終年度となるので,研究のとりまとめを行わねばならないが,上述のとおり昨年度は予定していた渡米調査が実現せず,また今年度も未だ見通しが立たないため,研究計画の一部を見直すか,それでも十分な成果が期待できない場合は期間の延長を申請したいと考えている。 現状でも進められることとして,米国の民生分野と防衛分野のダイナミックな相互作用をシステムとして把握するという目標の達成を図りたい。幸運にも,『国際安全保障』の6月号において,報告者の責任編集により「イノベーション・エコシステムと安全保障」と題した特集が組まれる予定で,報告者はそこで序論を執筆する予定である。ここで過去2年の研究の成果を踏まえ,イノベーション・エコシステム論に安全保障の視座を組み込んだ研究の可能性を提案する予定である。それに引き続き,今度は安全保障研究にイノベーション・エコシステム論を接合する試みとして「米国の国防イノベーションにおける外部エコシステムの利用」についての事例研究を論文化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により,2度予定していた渡米調査ができなくなったことが最大の原因である。その際の資料収集と連動して購入する予定であった書籍についても,一部購入を先送りせざるを得なかった。
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